「ん〜!おいし〜ぃ!」
「おいしいですのー!あまあまですのー!」
「やっぱ甘いものって良いわねぇ!」
ホイップクリームやチョコレートソースがトッピングされたドリンクを飲んでいる梅乃とエオリアちゃんとお母さんが、目の前で笑顔を咲かせている。
「カロリーヤバそ」
ブラックコーヒー片手に破竹が呟く。
確かに、それは間違いない。ジュース自体そもそも高カロリーなのに、そこに追加されている顔ぶれからして…うん…。飲み物だからするする入ってしまうだろうし、ケーキより余程危険かもしれない。
ほうじ茶のラテが思いの外熱かったらしく、冷めるのを待っているお父さんの隣で…僕は紅茶を口にした。
今日僕は、以前決行した作戦で破竹と来たカフェに家族で来ている。
皆でゆっくり過ごしてみたかったから提案したんだけど、快く賛成してくれて…嬉しかった。
「この前ケーキバイキング行ったばっかりなのに〜また増量しちゃったらどうしよ〜」
そう言いながらも、お母さんは笑顔だった。心底幸せそうだ。
「気にしない気にしなぁい!動けばカロリーゼロだよぉ!」
「そうよねー!あっ、動きながら飲めば無敵なんじゃない!?」
「ママ天才ぃ〜!!」
「咽せるだろ」
小刻みに左右に揺れている梅乃とお母さんを見て、そこまでして飲まなくても良いんじゃ…と思ってたら、破竹がぼそりと突っ込んだ。その直後。
「「げっっっっっほごっっっっっほ!!!!」」
本当に二人揃って咽せた。タイミングばっちりだ。親子だなぁ。
「はわわわわ!?大丈夫ですか!?」
真ん中に座っているエオリアちゃんがぎょっとして、梅乃とお母さんの背中を慌ててさする。
「言わんこっちゃねえ」
「あはは…」
僕と破竹が苦笑する中、密かに自分の飲み物と格闘していたらしいお父さんが動き出した。袖をミトン代わりにして、両手でカップを持って、恐る恐るずず…っと飲んで…微笑む。どうやら美味しかったらしい。
ほぼ空気吸ってただけな気がするけど、良かった良かった。
あれやこれやと話題が尽きなくて、気が付けば集合してから3時間は過ぎていた。
楽しい時間はあっという間だ。でも、誰も席を立とうとしない。まだまだこの楽しさを共有出来ると思うと、堪らなく嬉しい気持ちになった。
「兄貴と言ってたんだけどさ。久々に母さんのケーキ食いたいんだよな」
「そうそう。美味しいよねって話してて」
「えー!?何よ何よ照れるじゃないのよー!!いくらでも焼くけど!?ホールでいく!?」
瞳を輝かせる乗り気なお母さんを前に、僕は破竹と視線を合わせて笑う。
「じゃあ俺、甘さ控えめのショートケーキ。ホールで」
「僕はチーズケーキがいいな。少し小さめにして貰えたら、ホールで食べられると思う」
「ふふん!任せなさい!お安いご用よ!」
やった。楽しみ。
「お母さまっ!わたくし、チョコレートケーキが食べたいですのっ!」
「あたしもあたしもぉ〜!!フルーツケーキがいいなぁ!シャインマスカットいっぱい乗せてぇ〜!」
エオリアちゃんと梅乃が身を乗り出して挙手すると、お母さんは楽しそうに言った。
「オッケー!こりゃ後日筋肉痛ね!」
飲みやすい温度になったのかごくごくとラテを飲んでいるお父さんに、梅乃が尋ねる。
「パパはどうするぅ?」
「え」
「幹月〜リクエストするなら今よ〜?まあ、いつでも良いんだけどね!」
「そ、そうか。じゃあ、お言葉に甘えて…陽根さんのオススメをお願いしようかな」
「激甘カロリー爆弾にしてあげるわね」
「陽根さん???」
勿論冗談だと思うけど、仮に実現したら体重増加は勿論、糖尿病待ったなしだろうなぁ…。
僕らのテーブルは、笑いに包まれていた。
食卓を全員で囲んでいた頃を思い出して、懐かしくて…いつかまた日常として帰ってくると思うと、その日が待ち遠しくなった。
…これからも家族仲良く、生きていけたらいいな。
そんな事を思いながら、僕はティーカップを傾けた。