「何。どしたの」
マジック片手にボクを見ているレンに問う。するとレンは、真剣そのものの表情で言った。
「ぼく、思ったんですよ。めがみさま…眉毛無いなぁって」
「…ま、まさか」
「ぼくが!!!描いてあげます!!!」
「マジックでやる事じゃあねぇんだよォ〜〜〜〜!!!!!」
なーに言ってんだこいつぁ〜!?!?
「安心してください!ちゃんと油性なのです!」
うわ。ボクの体が水で出来てるの考慮してくれてやがる。ちゃっかりしてんな。
「絶対消えないのです!!」
「むしろ消えて欲しいんだが」
「細いのと太いのどっちがいいですか?」
「どっちも嫌だが」
「お任せって事ですね!っしゃい!任せろぃ!」
話聞いてくれねえ〜。聞けやボケ〜。
「いいかい、レン。ボクはね、完璧に完成された美し過ぎるこの姿で生まれ落ちたんだ。つまり眉毛が無いのは元々なの。それが似合うからなの。最適解なの。分かるだろ?」
「確かに、めがみさまは美人さんなのです」
「だろ?だから眉毛は要らな…」
「でもお化粧したらもっと美人になると思うのです」
「すっぴんでいーいーのーーー!!!ボクみたいに素材が良いと小細工しなくても映ーえーるーのーーー!!!」
はぁ、やれやれ。まさかマジックを化粧道具扱いするとは…流石ガキンチョ。
「レン。一つ教えてあげよう」
「なんですか?」
「化粧ってのはね、顔でやるお絵描きみたいなもんなんだよ」
「ほー!楽しそうなのです!」
ワクワクすな。
ボクはレンが描いてくれた似顔絵(似ているとは言っていない)を見せ付ける。
「…で、レンは紛れもない画伯だ」
「がはくってなんですか?吐血してる音みたいなのです」
がはっ…くっ…!じゃねーんだよ。
「とんでもなく下手くそって事」
「なんですとぉー!?めっちゃ上手く描けてるじゃないですかぁ!くりそつなのですよ!」
ボクはぐちゃぐちゃのクリーチャーじゃねーんだよ。この自信どっから湧いてんだまじで。
「という事で、天才画家ハイドレンジアにどんと任せてください!豪華客船に乗った気持ちで!」
泥舟だよ。沈むの分かりきってんだよ。そもそも乗る場所すら見当たらんのよこの船。いかだ以下だ。ただの丸太だ。はーい解散解散。
「そんじゃ早速やりますか!」
「やめろおおおおおおおおお近付くなあああああああああああああーーーー!!!!!」
…この後ボクは、一本の線で描かれた眉毛を見て腹筋崩壊したのだった。