Spirit/SS-3

「何。どしたの」

マジック片手にボクを見ているレンに問う。するとレンは、真剣そのものの表情で言った。


「ぼく、思ったんですよ。めがみさま…眉毛無いなぁって」


「…ま、まさか」

「ぼくが!!!描いてあげます!!!」

「マジックでやる事じゃあねぇんだよォ〜〜〜〜!!!!!」

なーに言ってんだこいつぁ〜!?!?

「安心してください!ちゃんと油性なのです!」

うわ。ボクの体が水で出来てるの考慮してくれてやがる。ちゃっかりしてんな。

「絶対消えないのです!!」

「むしろ消えて欲しいんだが」

「細いのと太いのどっちがいいですか?」

「どっちも嫌だが」

「お任せって事ですね!っしゃい!任せろぃ!」

話聞いてくれねえ〜。聞けやボケ〜。

「いいかい、レン。ボクはね、完璧に完成された美し過ぎるこの姿で生まれ落ちたんだ。つまり眉毛が無いのは元々なの。それが似合うからなの。最適解なの。分かるだろ?」

「確かに、めがみさまは美人さんなのです」

「だろ?だから眉毛は要らな…」

「でもお化粧したらもっと美人になると思うのです」

「すっぴんでいーいーのーーー!!!ボクみたいに素材が良いと小細工しなくても映ーえーるーのーーー!!!」

はぁ、やれやれ。まさかマジックを化粧道具扱いするとは…流石ガキンチョ。

「レン。一つ教えてあげよう」

「なんですか?」

「化粧ってのはね、顔でやるお絵描きみたいなもんなんだよ」

「ほー!楽しそうなのです!」

ワクワクすな。
ボクはレンが描いてくれた似顔絵(似ているとは言っていない)を見せ付ける。

「…で、レンは紛れもない画伯だ」

「がはくってなんですか?吐血してる音みたいなのです」

がはっ…くっ…!じゃねーんだよ。

「とんでもなく下手くそって事」

「なんですとぉー!?めっちゃ上手く描けてるじゃないですかぁ!くりそつなのですよ!」

ボクはぐちゃぐちゃのクリーチャーじゃねーんだよ。この自信どっから湧いてんだまじで。

「という事で、天才画家ハイドレンジアにどんと任せてください!豪華客船に乗った気持ちで!」

泥舟だよ。沈むの分かりきってんだよ。そもそも乗る場所すら見当たらんのよこの船。いかだ以下だ。ただの丸太だ。はーい解散解散。

「そんじゃ早速やりますか!」

「やめろおおおおおおおおお近付くなあああああああああああああーーーー!!!!!」


…この後ボクは、一本の線で描かれた眉毛を見て腹筋崩壊したのだった。