Episode.3-1 Maze Haze Scapegoat

【Prologue】

1 名無しさん
最近◯人のニュース多いよな

2 名無しさん
でも被害者ろくでもない人間ばっかじゃね

3 名無しさん
>>2
こんな所に書き込んでるお前もな

4 名無しさん
>>3
ブーメランで草

5 名無しさん
同一犯なのかね?物騒な世の中だこと

6 名無しさん
クソみてえな人間◯してるとか救世主だろ
俺の嫌いな上司も◯してくれねえかなー毎日毎日難癖つけられて俺がタイムカード押した後に居残り説教してくるんだが

7 名無しさん
>>6
おま俺

8 名無しさん
>>6
>>7
カワイソス

9 名無しさん
>>6
救世主は草

10 名無しさん
可愛い女の子だったら◯されてもいいわ

11 名無しさん
>>10
可愛くてもちょっと…

12 名無しさん
あんだけ被害出てんのに犯人の情報全然出てこないよなー

13 名無しさん
警察仕事しろ




【Chapter.1】

ミナサマ、ごきげんよう。ワタクシ………ああ、もう名乗る名前がないのでした。何卒、無礼をお許しくださいませ。

お願いがありますの。どなたでも構いません。どうかワタクシに…


お食べ物を恵んで欲しいのですわーーーー!!!


も、もう死にそうなんです!おカラスにお財布を取られてからはや三日…何も口にしておりません!このままでは干からびておミイラ不可避ですわ!

くっ!!ワタクシ、一生の不覚!!家族はおらず…帰るお家は無く…それなのに頼みの綱の全財産を奪われるだなんて…踏んだり蹴ったり殴られたりですわ…!もはやへこんでいない箇所を見つける方が難しいくらいにはボッコボコのベッコベコ…はあ…。

道行く人は行き倒れているワタクシに見向きもしてくださいません。忙しそうに早足で歩いていかれる方もいらっしゃれば、おスマホに釘付けの方、見てくれたけれど見なかった事になさる方…様々です。まあ、そうですわよね。こんなワタクシに救いの手を差し伸べてくれる方なんて…。

「あの…大丈夫?」

いらっしゃいましたわーーーーーーー!!!!!

「ぜ、全然だいじょばないですわ…」

お腹の音が追撃かのように大声で主張しました。はしたないですこと。ほほほ。

「そっか…じゃあ、これ。良かったらどうぞ」

屈んだお姉サマは、そう言ってワタクシにお箱を差し出します。これはまさか…。

「お弁当ではないですか!アナタがお困りになるのでは!?」

と言いつつ…ああ…ヨダレが止まりませんわ…た、食べたい…今すぐに食べたい…。

「気にしないでいいよ」

「め、女神サマですわ…」

「ふふ、大袈裟だなぁ。君、面白いね」


ワタクシとお姉サマはおベンチに並んで座ります。

「それでは、頂きますわ!!」

合掌するとお姉サマは、はいどうぞと微笑んでくれました。蓋を開けると…なんという事でしょう!!色とりどりのおかず!!お宝石箱ですわ~!!

「全部お姉サマが作ったんですか!?」

「うん。料理…好きで…」

「凄いですわねー!!」

美味ですわ…美味ですわ…泣けるくらい美味ですわ…干からびた体に染み渡ります…。もっとガツガツいきたい所ですが、染み付いた所作がそれを許してくれません。お上品に…ちまちま…うまうま…。

「君、学生さん?」

「いいえ!ワタクシこれでもれっきとしたレディなんですの!」

「あ、そうなんだ」

お姉サマが目を丸くします。ワタクシお発育が乏しいので未成年に見られがちなんですよね。まあ若々しく見られて悪い気はしませんし全然OKですわー!ちなみに20歳以降年齢は数えていませんわー!

「ところでお姉サマ、おスーツを着られてますけれど…お仕事は大丈夫なんですの?」

朝といえばお通勤ラッシュ!ワタクシには無縁ですが、お姉サマには関係大ありな気がいたします。ワタクシ心配。

「…いいの。今日、あんまり会社行きたくなかったから。休もうかなって思ってた所」

「あら」

何だかお元気がない様子…。


お姉サマに見守られながら食事を終えたワタクシは、お弁当箱をお返しして…ぺこりと頭を下げます。

「ありがとうございました!」

「うん」

「とっても美味でしたわ!」

「そっか。良かった…此方こそ、ありがとう」

笑顔のお姉サマに笑顔を返して、ワタクシはある事を尋ねようとしましたが…お着信音に遮られてしまいました。お姉サマは表情を一変させて、怯えた様におスマホを凝視しています。

「お姉サマ?」

「…だ、大丈夫。ちょっと待っててね」

おベンチから少し離れた所に行って、お姉サマは何やらお話をして…今にも泣きそうな顔で戻って来ました。

「私、やっぱり会社行く…」

「え」

「じゃあね…」

ふらふらとした足取りでお姉サマは歩き出します。とてもじゃないですがお仕事出来るような状態ではありません。でも…どうやら意志は固いようでした。ワタクシは何だか小さく見えるお背中へ、慌てて声を掛けます。

「ワタクシ…此処で待ってますから!またお話しましょう!」

お姉サマは振り返り、小さく手を振ってくれました。


辺りが暗くなって随分経ちます。お帰宅ラッシュを眺めながら、ワタクシはずっとおベンチで待っていました。待つと言った以上移動するという選択肢はございません。それにまだ聞きたい事も聞けていませんし。

…けれどこの日、お姉サマは現れませんでした。

会えたのは翌日の朝。そういえば世間では土曜日ですわね。最後に見た姿と同じおスーツを着たお姉サマ。歩いて来た方向は見送った時と同じ。つまり…家に帰っていなかったという事ですわ。お姉サマは此方に気付いた途端、ほっと胸をなで下ろしました。ワタクシは尋ねます。

「まさか、こんな時間までお仕事を?」

「………うん。私、鈍臭いから、中々終わらなくて」

だからってこんな時間までお仕事をさせるなんておブラック企業過ぎますわよ!!

「でも、大丈夫。ちゃんと終わったから…」

いけない。お姉サマ明らかに様子がおかしいですわ。お声もお体も震えて…。

「とりあえずおベンチに…」

ワタクシが促した、その時。

「う、う゛っ、おえ゛ぇっ……」

お姉サマは蹲って嘔吐してしまいました。何も食べていなかったのか大した量では無かったのが不幸中の幸い……いいえ、何も食べていないなんて大問題ですわ!?疲労困憊でお食事もしていなくて…恐らくろくに寝てもなかったのでしょう。このままではいけません。

肩を貸しておベンチに座らせた後、ワタクシは申し出ました。

「お姉サマ、ワタクシ代わりに何か買って参ります」

「で、でも…迷惑に…」

ああ、なんて優しい方なのでしょう。最初に迷惑を掛けたのはワタクシだというのに。まだワタクシは何もお返し出来ていないというのに。

「そんな事ありませんわ。今食べられそうな物はありますか?教えてくださいませ」

「………えっと…ゼリー…」

「分かりました!ちょっぱやで行って来ますわ!待っていてくださいな!」

ワタクシはお姉サマから預かった可愛い柄のお財布を手に、近くのおコンビニに駆け込みます。そしておゼリーとお水を買って急いで駆け戻りました。

「お姉サマ!」 

「あ…」

「10秒で元気をおチャージ出来るおゼリーがありました!それからお水ですわ!」

「ありがとう…」

おゼリーを差し出すと、お姉サマは力無くも微笑んで受け取ってくれました。ひとまずワタクシ安心です。

「なんかゲロ臭くね?」

「うっわマジだ」

「酔っ払ったおっさんでも居たんだろ」

「はあーくっせえーふざけんなよー」

チャラそうなお兄サン達がそう言いながら、ワタクシ達の居るおベンチを通り過ぎて行きます。お姉サマのお顔が曇ってしまいました。くっ!ワタクシ気が利かなかったですわ!違うおベンチにするべきでした!くっさかったらゆっくり休めませんもの!

10秒以上かけてゆっくりおゼリーを食べ終えたお姉サマは、おスマホを取り出しました。

「警察に言って…掃除してもらわないと」

「お、お警察っっっ!?!?」

そのおワード…ワタクシ、お心の臓がドキンコドキンコしてしまいます!!

「うん。自力ですぐ掃除出来そうにないし…」

「べ、別に放置したら良いのではないでしょうか!!」

「駄目だよ〜…」

冗談だと思われてしまったのかお姉サマが笑います。まずいまずいまずいですわ…お警察だけはワタクシ関わりたくないのですわ…でもまだお姉サマに大事な事を聞けていないし〜!!放って置けないし〜!!こーなったら!!

「ワタクシにお任せください!!おゲロお処理お検定1級の実力をお見せいたしますわ!!」

…という事でワタクシは、近場のお店からおホースをお借りしておゲロをお排水溝に流しました。

「本当にごめんね…ありがとう…もうなんてお礼を言ったらいいか…」

「おほほ!お気になさらず!」

ワタクシはそう笑い飛ばしますが、お姉サマは納得いかないご様子。

「…あのね」

「どうしました?」

「またお弁当、食べてくれる?」

「ええっ!?」

「私が出来るお礼、それくらいだから…」

「ワタクシとしては、願ったり叶ったりラジバンダリですわよ!?」

あんな美味しい物をまた食べられるなんて…幸せ極まれりですわ〜!!

「ふふ。じゃあ月曜日、作って来るよ」

「はい!楽しみにしてますわ!」


ワタクシはお姉サマが持ち直せるまでお傍におりました。暫く座っていたら少し元気になったようで…ワタクシは帰宅するというお姉サマを見送ります。

「色々ありがとう。本当に助かったよ…また会おうね」

「はい、また!待ち合わせ場所はこのおベンチですわ!」

「うん」

お姉サマは姿が見えなくなるまで、何度も此方を振り返りつつ帰って行きました。ワタクシはずっと手をブンブン振っておりました。だって嬉しいんですもの!おほほ!お弁当確定だなんて、思いもよらぬ収穫ですわ!やったー!やったー!

「…あ」

すっかり質問忘れてましたわーーーーー!!!




【Chapter.2】

月曜日が待ち遠しいですわー!るんるんるーん!やっほっほー!いえええええええーい!

ワタクシはウッキウキで、とりあえずお暇なのでお散歩をしていました。お夕日が綺麗ですわー!

と、そんな時。

「ンブフッ!?!?」

誰かとぶつかって吹っ飛ばされました。

「あーん痛いですわー!!お骨が粉々に粉砕しましたわー!!」

「骨粗鬆症かよ」

呆れた目でワタクシを見下ろしているのは、背高のっぽなお兄サンでした。おヘッドホンを付けていますが、此方の声はちゃんと聞こえているようですわ。

「…髪の毛白いし老人だったか。すまんすまん」

「ご老人扱いされる程まだ老いてませんわよ!!!」

ちょぉい!?初対面でなんて失礼な方なんでしょう!!おジェントルメェンの対極ですわね!!

「そもそもアナタも髪の毛白いじゃありませんの!やーいやーい!」

「オレは苦労が祟って真っ白になっちゃったんですぅー」

「それを言ったらワタクシだって!!」

「…なんだ。仲間かよ」

お兄サンはそう言うと、尻もちを着いているワタクシに微笑みながら手を差し出してきました。

「悪かったな」

き、急に優しくなると戸惑いますわね!しかも前髪が長くてお顔の大半隠れてますけどよく見るとかっこいいですし!キュンですわ!

「あ…はい。ワタクシこそ…」

もしかしてラブロマンスが始まる!?と思いましたが…。

「んじゃ、達者でな」

お兄サンはそう言ってスタスタと歩いて行ってしまいました。あっさりでツレないですわねえ!

「お、お達者で〜…おほほほほ…」

………。

また会えたりしないですかね。ドキドキ。


さーてお散歩再開ですわー!!るんるんるーん!やっほっほー!いえええええええーい!

「ンブフッ!?!?」

既視感!!既視感が凄い!!ワタクシ舞い上がるとぶつかりやすいんですかね!?

「あらら、ごめんねぇ」

ワタクシの目の前に居たのは、ふくよかなオジサマでした。

「怪我してないかい?大丈夫ぅ?」

な、なんか視線がねっとりしているような…笑顔もにったりしているような…。

「だ、大丈夫ですわ!」

ワタクシは自力で起き上がって急いでこの場から離れようとしました。でも、ガッと腕を掴まれてしまいます。

「お詫びに美味しい物ご馳走するよぉ」

「え」

ご馳走ですって!?!?

「何でもいいよぉ」

「ええ!?」

何でもですって!?!?そんなの…そんなの…あそこを選ぶしかないじゃないですか!!


「好きなだけ食べてねぇ」

「ありがとうございますですわー!!」

ワタクシ、おファミリーレストランにおりますわー!!店内がキラッキラしてて目ん玉潰れそうですわー!!は〜!贅沢ですわ!贅沢ですわ!場違い感がエグいですがそれはそれこれはこれ!お姉サマのお弁当以降何も食べて居ませんでしたし、ワタクシ絶賛グーペコランタンなのです!

おメニューを見てみると〜…ううん!エクセレント!なんて美味しそうなのでしょう!目移りしてしまいます!

「ゆっくり選んで良いからねぇ」

「ありがとうございます!!」

おメニューと睨めっこして……よし、決まりました!!

「おハンバーグステーキのおライスセットにしますわ〜!!」

すると向かいのおソファに座っているオジサマは、意外そうにワタクシを見てきました。

「それだけでいいの?」

「え?」

「女の子なら、パフェとか食べるかなって…」

「おパッフェも食べて良いんですの!?」

「良いよぉ。ドリンクバーも付けなよ」

オジサマ、神!?!?さては、神!?!?

「ありがとうございます!!ちゃんとお礼させて頂きます!!」

ワタクシ、お食べ物を恵んでくださった方には決まってお礼をしています。ギブアンドテイクの精神はワタクシの美学!誠実に生きなければ自分を嫌いになってしまいますもの。月曜日、お姉サマにも是非お礼しなければね。

…あら、オジサマがごくりと生唾を飲みました。オジサマもお腹すいてるのかしら!


あーわくわく!わくわく!おファミリーレストランなんてお高級料理店、滅多に来れないので感激ですわ〜!

おドリンクバーから取って来たおジュースを飲みつつ心を弾ませていると、オジサマが口を開きました。

「えっとぉ、お名前聞いても良いかなぁ」

「あら、名前ですか」

んーーーーーー…困りましたわね。こういう時は!

「名乗る程の者ではございませんわ!」

「面白い子だねぇ」

オジサマは笑って、懐からお名刺を取り出しました。

「僕はこういう者ですぅ」

「ほほー!」

「困った事があったら、いつでも連絡してねぇ」

「はーい!」

ワタクシはおパーカーのおポケットにお名刺を片付けます。するとお料理が運ばれて来ました。ナイスタイミング!目前に置かれたおハンバーグステーキ……ひ、ひええー!!お、お、お、お肉ですわー!!湯気と匂いが凄まじいですわー!!しかもこの後おパッフェまであるんですってよ!!ワタクシ幸せ死してしまいますわー!!最後のお晩餐にならないように、心して掛からねば!!



ふぅ〜!満足!満腹!ご満悦!おエネルギー満タンですわー!

美味しい美味しいお料理を堪能して、ワタクシ達はお店を後にしました。

「ではオジサマ、」

お礼に…と続けようとしましたが、オジサマに腕を掴まれました。

「君さぁ、可愛いよねぇ」

「え?あ、はい!自覚しておりますわ!」

ワタクシのお顔は可愛いとワタクシ知っております!

「お礼してくれるんだよねぇ」

「モチのロンですわ!ワタクシに二言はありませんわ!」

「喋り方が変なのはちょっと気になるけど…まあいいや…」

「え、えっとー?」

オジサマはワタクシの腕をしっかりと握り締め、ズンズン歩き出します。

「美味しい物食べさせてあげたんだしぃ、ちゃぁんと一晩付き合ってねぇ」

おやおやまあまあ…ワタクシのお礼ってそういうんじゃ無かったんですが…。あ、ワタクシはレディですのでオジサマの言葉の意味は理解しておりますわ。別にワタクシは気にしないのですけど、オジサマは良いのでしょうか。こういうパターンいつも結果が決まっているのですけれど…。


オジサマとおホテルに入ったワタクシは、先にお風呂どうぞぉと言われたのでお言葉に甘える事にいたしました。一緒に入ろうとしない辺りオジサマ結構紳士的ですわね!

…あらまあ!なんとありがたい事にお洗濯機がありますわ!ワタクシはここぞとばかりにお洋服を放り込みます。機会は逃しません!一張羅は大切にしませんと!お食事が最優先なので基本お洗濯は後回しですのよねー。そろそろ洗いたい頃合いだったので超ラッキーですわ!

おボタンを押す前に、そういえばおポケットの中にお荷物があった事を思い出します。ちゃんと取り出してっと…。ふふふ、セーフですわー!

さあさあお待ちかね!!久々のお風呂ー!!飛び込んでやりますわー!ざっぶーんですわー!おほほほー!最高ですわー!おリフレッシュ〜!!訳あってお風呂屋さんは使えないのでとっても助かります!ゴワゴワだった髪の毛がサラサラになっていくの楽し過ぎますわ!ゴシゴシ!あーゴシゴシ!…あら、前髪伸びてきてますわね。またハサミでチョキチョキチョキリンコしませんと。髪が目にかかると鬱陶しいんですのよねえ。でもワタクシにはおパッツン前髪が似合うので、例え管理が面倒でも続行しますわよー!

そんなこんなで全身洗い倒して、お湯船に浸かっていると…。

「随分念入りに準備してるねぇ」

オジサマに扉越しに話し掛けられました。

「焦らし上手だったりぃ?こういうの慣れてたりするのぉ?」

「いいえ!ワタクシ純潔の乙女ですわよ!」

「そっかぁ、じゃあ初めてなんだぁ。光栄だなぁ。優しくするからねぇ」

「ありがとうございます!」

…はてさて。オジサマはワタクシを受け入れられるのかしら。ちょっと試してみましょうか。

ワタクシはガラッと扉を開きます。予想外だったのか、目の前で立っているオジサマはびっくりしたように声をあげました。そしてワタクシの生まれたままの姿を見て…厳密には下半身を見て…ヒュッと息を飲みました。

「そ、それ…」

「オジサマ、どうかされました?」

「ひぃっ!!」

ワタクシが一歩踏み出すと、オジサマは慌てて後ずさります。

「どうしてお逃げになるの?あんなにノリノリでしたのに」

「わ…わぁ、あ…」

「ワタクシ悲しいですわ〜」

「な、なんなの…君…なんなのぉ…!?」

「何って。レディですわよ?」

「そんな訳ないだろぉ!?」

叫んだオジサマは弾かれた様に走り出すと、お荷物をまとめてバタバタとお部屋を出て行ってしまいました。どうやらお支払いはしてくれたご様子。まあ支払わないとお部屋から出られないシステムなので、あたり前田のクラッカーなのですけれど。

それにしても………はあ、やれやれ。やっぱりこうなってしまいましたわね。


ワタクシはお電話でおフロントに事情を説明しました。するとお洗濯が終わるまで待ってくれる事になりました。助かりますわ~。ビショビショのお洋服でお外に出たら、風邪を引いてしまいますもの!

おバスローブに身を包んだワタクシは、適当におテレビを付けてお洋服の乾燥を待ちます。それからちらりとおバスローブを捲って、下半身を見てみました。

…そこにあるのは、消えない沢山の縫い傷。

これを見たらミナサマ決まって態度を豹変させるのです。ある人はオジサマの様に怯えて、ある人は気持ち悪いと罵って、ある人は化け物と吐き捨てて…。ふふ。難しいものですわね。

何だか疲れて、パタリとベッドに寝転んだワタクシは…ふかふかに負けてうっかり眠ってしまいました。




【Chapter.3】

「やめて…!お母さん…やめてよぉ!!」

小さい男の子に、包丁を手にした母親が詰め寄ります。

「大丈夫。怖くないよ。すぐ終わるよ」

その目は正気を失っていました。男の子は首を横に振って泣き叫びます。

「嫌だ!!ぼく、女の子になりたくない!!」

「どうしてそんな事言うの?知ってるでしょ?お母さんがずっとずっとずっとずっと女の子が欲しかった事。可愛い可愛い女の子が欲しかった事。貴方は残念ながら女の子ではないけど、とっても可愛いわ。お母さん嬉しい。ただ…これから成長していく事を考えたら…ね。せっかくの原石が目も当てられない石ころになってしまうなんて勿体ないじゃない。余計な物を付けているばっかりに。だから今の内に正しい姿にしてあげたいの。分かってね」

母親は男の子を捕まえました。服を剥ぎ取って迷いなく包丁を振りかざします。男の子の██を██する為です。

「お母さんね、お医者様にもう子どもを産めないって言われたの。そもそも貴方を身篭った事自体が奇跡だったのですって。だからね、貴方はお母さんの希望なのよ」

母親は██を██しようと試みます。男の子の悲痛な叫び声が響き渡りました。

…思ったよりすんなりいきません。母親は、おかしいなぁと思いながら何度も何度も繰り返しました。

何度も何度も何度も何度も。

繰り返しました。

「お願い女の子になってお願い女の子になってお願い女の子になってお願い女の子になって………」

そんな呪詛を吐きながら。



「…うーん」

いけないいけない。つい眠ってしまってましたわ。何だか嫌な夢を見ていた気がしますけど…そんな事よりお洗濯機がワタクシを呼んでいます!

「ありがとう、お疲れ様ですわ!」

労いつつホカホカになったお洋服を取り出して着替えると、なんだか心もポカポカになった心地になりました。やっぱり温かいお洋服はジャスティスですわ!さ、忘れ物はないかしら。えーと、あれとこれと…あ、オジサマのお名刺どうしましょう。どうせお電話出てくれないでしょうし捨てておこうかしら。悪用されたら可哀想なのでビリビリに細かく破いてからおゴミ箱にインいたしました。それからおフロントに報告して、ワタクシはお部屋を出ます。


まだまだ真夜中!月曜日まであと一日!さーて…何をして過ごしましょう!

「…あら?」

あそこでおスマホを弄っていらっしゃるのは…もしや!

「お兄サン!!」

あの時の髪真っ白背高のっぽイケメンお兄サンですわー!!また会えましたわー!!これってもしや、運命!?

お兄サンはワタクシに気付いて、此方をチラリと見てくれました。そして呆れた様に口を開きます。

「オマエ、こんな時間に何やってんだ」

「えっと〜野暮用を少々!」

「ふーん。ま、ここらじゃ若者の深夜徘徊なんぞ珍しくねえけど…気ぃつけて、さっさと帰んな」

しっしと追い払う動作をされましたが、ちゃんと心配してくれてますわね。お優しい方ですわ。キュンですわ。でも…。

「帰るお家、無いですわ」

「…」

「お兄サンは?」

「…オレも、帰る家ねぇよ」

「まあ!お揃っちですわね!」

「ばーか。んな事で喜ぶな」

うふふ。笑われちゃいましたわ。笑顔がクールで素敵ですわ。

「この後、ご予定はあるんですか?」

ワタクシが尋ねると、お兄サンはおスマホをタプタプしながら答えます。

「特に何も」

「つまり、お暇人!」

「うっせー」

「大丈夫ですわ!ワタクシもお暇人ですから!」

「見りゃ分かるっつーの」

うふふふ!めっちゃ構ってくれますわ!これは脈アリ!

「一緒にお茶でもどうでしょう!?」

「真夜中に男を誘うな。マセガキ」

「んま!これでも大人ですのよ!」

いやん!ええ〜…?みたいな顔されましたわ!

「ちんちくりんなのに?」

「えっへん!」

「無い胸を張るな」

「きゃー!セクハラですわ!セクハラですわ!」 

「あーあーあー悪かったから大声出すのやめろ」

「はーい」

小声で答えると、お兄サンはやれやれと溜息を吐きました。そしておスマホを仕舞ってワタクシに向き直ります。真っ黒なおめめが…す・て・き!

「…何でオレに構うん」

「えー?」

「えー?じゃねんだわ」

ワタクシはもじもじしながら可愛さ全開でお答えします。

「そんなの〜そんなの〜LOVE!だからに決まってますわ〜」

「未成年に色目使うなし」

「色目だなんてそんなぁ!……え?」

未成年?

「大人じゃなかったんですの!?」

「17」

「Seventeen!?」

「無駄に発音良いな…」

うっそー!?こんなに発育良いんですか最近の若い子は!!恐ろしっ!!恐ろしいですわ!!ワタクシと大違い!!

「まあそんな訳なんで、犯罪者になる前に去ってもろて」

「やだやだやだやだやだですわ!!」

「駄々こねんな」

「ではワタクシも未成年という事で!!」

「事実を改変しようとすんな」

「じゃ、じゃあせめてお名前を…お名前を教えてください!!」

「今後関わらねえのに名前知ってどうすんだ」

「昼間におデートしてくれないんですか!?」

「面倒なのに目付けられたなー…」

お声に出てますわよ!おほほ!

「…神々廻(ししば)ナギ」

「ほ?」

「二度は言わん」

「ほーーー!!ほっほーーー!!」

「興奮し過ぎ」

神々廻ナギ…神々廻ナギ…覚えました!!ワタクシの脳細胞に刻み込みました!!なんて素敵なお名前!!でも…急に下のお名前でお呼びするのは…ワタクシはずかちいので…。

「神々廻サン!!」

「はい。なんでしょーか」

「ワタクシは名乗るお名前が無いのでご自由に呼んでくださいまし!マイハニーでもマイワイフでも!」

「じゃ、チビ先輩で」

「『い』しか掠ってませんわ!?」

「一文字掠っただけでも儲けもんだろ」

「確かに!!」

やったー!やったー!

「ところで神々廻サン!」

「はいはい」

「お茶に行きましょう!」

「…オレが大人になったらな」

断られなかったですわー!!わーい!!嬉しいですわー!!…っとと、あんまりしつこくして嫌われたりでもしたら悲しいですわね。今日はここまでにしておきましょう。それはもーーーう名残惜しい!ですけど!ワタクシ達きっと運命の赤い糸で結ばれていると思うので!絶対絶対絶対にまた会えますわよね!うふうふふ!

と思っていたら、神々廻サンがポツリと呟きました。

「…腹減った」

「え?」

「コンビニ行く」

「おコンビニ…アナタとコンビニ…つまりワタクシとコンビになりたいのですか神々廻サン!?」

「どういう解釈だよ」

「人生のパートナーになりたいのでは?」

「なんて?」

「伴侶として共にこの先を歩みたいのでは?」

「なんで?」

肩を竦めた神々廻サンは、おコンビニがあるであろう方向へ歩いて行きます。ついて行きたいけど…ううむ…。立ち尽くしながら悩んでいますと、神々廻サンが振り向いて言いました。

「来ないんだ。意外」

そう言ってくるっと踵を返して、また歩き始めます。な、な、なーーーー!?!?

「行くに決まってますわーーー!!!」

ワタクシ、神々廻サンにどーんと突撃すべく猛ダッシュー!!



おコンビニに入ったワタクシ達。神々廻サンは商品棚には目もくれず、おレジ近くのお肉まん達を眺め始めました。

「もうこの時間だし大して残ってねえな。あるだけマシだけど」

「そうですわねえ」

お肉まんお好きなのかしら。うふふ。

「オマエ、肉まんとあんまんどっち好き?」

「どっちも大好きですわ〜!」

「…そか」

神々廻サンは店員サンに声を掛けます。

「肉まんとあんまん一つずつ」

まあ!両方だなんて!強欲な所も素敵!


おコンビニを出て、お店の近くのおベンチに座りました。さーてさてさて!神々廻サンのもぐもぐタイム拝見しちゃいましょ!心の準備ばっちし!なワタクシに。

「ん」

なんと!!神々廻サンは袋から取り出したお肉まんを半分に割って、片方を差し出してくれたではありませんか!!

「い、良いんですか!?」

「要らんなら一人で食うけど」

「要ります要ります超要ります何ならあと100個は要ります!!」

「胃袋ブラックホールかよ」

わ、わぁあー!!ホカホカ!!熱々!!しかも神々廻サンと半分こだなんて…お、おほ、おほほほ!おほ!

「神々廻サン、ありがとうございます!!」

満面も満面な笑みでお礼を言ったら嬉しそうに口元を緩めてくれました。ひぃん…しんどいですわ…多分ワタクシの心拍数、今大変な事になっておりますわ…。ととととにかく!温かい内に頂きましょう!むしゃむしゃむしゃりんこ!美味しい物はいくらでも入りますわ!食べられる時に食べておかないとですわ!幸せー!

ぺろりと平らげてニコニコしていたら。

「チビ先輩」

「はぁい…モフゥ!?」

おあんまん(おハーフ)をお口に突っ込まれましたわー!!これ、あーんってやつですわよね!?え!?ワタクシ達ラブラブカップルァ!?

「はは。なーんか和むわ」

……………………え、えへ。

「それは何よりですわ!」

「ほんとに年上なん?」

「ええ、お姉サンですわ!」

「お姉さん(笑)」

あらー!?なんでどしてなんでー!?

「じゃあさ。お姉さんにお願いあんだけど」

「どんとこい!ばっちこい!」

「朝まで膝貸してくんね」

「お膝レンタルですわね!お易い御用ですわ!ではお膝をガッコンと取り外しまして〜…」

え?いや?ん?待ってくださいまし?よーく考えて?ワタクシ?よーく考えて?

「おひじゃまくりゃって事ですか!?」

「うん」

「むしろそんなご褒美貰ってしまって良いんですか!?」

「何でご褒美になるんじゃい」

なるに決まってんでしょうがぁ!!おっと喜びのあまり感情が昂ってつい心の中でおプッチンしてしまいましたわ…こほん!

「…オレ、未成年だから。夜にホテルとかネカフェとか使えねえんすよ」

「という事は…」

「基本ベンチで寝てる」

「まあ…」

神々廻サンは大きな欠伸を一つして、ごろんとおベンチに横になりました。勿論ワタクシのお膝を枕代わりにして。

「つー訳でよろしく。おやすみー」

「お、おやすみなさいませ!良い夢を…」

大胆〜!拒否権無〜!なんて強引グマイウェイなお方〜!ますます好きになっちゃいましたわ〜!いっそ神々廻サン専用お枕になりたいですわ〜!



えー、こちらワタクシ。朝になりましたが、神々廻サンはまだグースカピーしております。喧騒の中に居ても、おヘッドホンが耳栓代わりなのか安眠出来ているようです。ワタクシはというと夢見心地のまま、太ももの感覚がほぼ無くなっているのも気にせず…幸せに浸っております。はあ…神々廻サン…ほんと…まじ…イケメンですわ…お肌もツヤツヤ…これが若さ…眩しい…。

「…母ちゃん」

「え?」

神々廻サン…今、母チャンって言いました?およよ?聞き間違い?いえいえまさか。ワタクシお地獄耳ですし。ワタクシをお母サンだと勘違いするなんて、やっぱり何だかんだで17歳なんですわね~…可愛いですわ…。
お寝言を呟いた後も起きる気配は無かったので、ワタクシは神々廻サンの頭をなでなでなでりんちょしました。はー、役得役得。

「ふわぁ〜…」

可愛い寝顔を見ていたら…何だかワタクシも眠たくなって参りましたわ…あんまり眠らない様にしてるんですけれどね…嫌な夢ばかり見るので…。

ああ、でも…逆らえない…です…わ………




【Chapter.4】

「また間違えた」

母親は、ピアノに添えられた小さな手をピシャリと打ちます。

「どうしてこんなに練習しているのに弾けないの?せっかく買ったピアノが泣いてるわよ…嘆かわしい」

「ごめんなさい、お母さま…あの…ぼく、疲れ……」

ハッと口を押えましたが……ああ、もう遅い。

「ぼく?今、ぼくって言った?」

「い、言ってません!!」

「言った」

母親は我が子の首根っこを掴みます。そして暗い部屋に放り込んで扉を閉めて鍵をかけました。

「現状顔しか取り柄がないのだから、せめて言葉遣いだけでも早急に定着させなさい」

冷たかった声は、急に温かみを持ちます。

「お母さん信じてる。どれだけ貴方が無能でも見捨てないわ。だから…応援したいと思えるような素敵な子になってね。頑張ればいつかきっと報われる日が来るの。貴方なら素敵なお姫様になれるわ」

意味不明な発言に反論する気力は既にありません。無駄だと分かっているからです。だから男の子…いいえ、もはや何と形容していいのかさえ分からない…哀れな子は、暗い部屋で何度も何度も唱えました。

「ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ…」

まるで、刻み込む様に。


「んごっ…」

ワタクシ、お開眼!シャキーン!…あら?いつの間に横になっていたのかしら。しかも頭の下にあるのって…。

「豚の鳴き真似上手いな」

神々廻サンの声が頭上から降ってきます。

という事は…もしかしてもしかしなくても今ワタクシ神々廻サンにお膝枕して貰っちゃってる感じですのーーー!?!?

……頬擦りしときましょ。すりすりすり。あ、すりすりすり。

「くすぐったいからやめれ」

のあー!!お膝ずらされましたわー!!ぐぬぬ!!

「あ。ヨダレ垂らされてら」

「ええ!?ご、ごめんなさい!!」

ひーん!!ワタクシってばなんて事を!!

「いいよ別に。ほっときゃ乾くやろ」

神々廻サンは呆れた様に、でも優しく笑います。まあ…怒らないのですわね…お心が広いですわ…キュンですわ…。

「にしても、めっちゃ爆睡してたな。もう昼過ぎだぞ」

「まあほんと!おやつの時間ですわ!」

神々廻サンが見せてくれたおスマホに表示されている時間を見てびっくりして、ワタクシはガバッと起き上がります。

「神々廻サン…どうしてワタクシが起きるまで、待っていてくださったんですの?」

「置いてけば良かったん?」

「そんなの嫌ですわー!」

「だろ?だから居た」

ほあ…優しさに包まれたなら…きっと…目に映る全てのものは…LOVE…。

「…さてと。起きた事だし、オレ行くわ」

と思ったら急にあっさり塩ラーメン!!

「ご予定が出来たんですか?」

「まあな」

「ワタクシ以外のレディに会いに行くんですか!?」

「秘密」

いやあああああああああーーーー!?!?!?

「またな。チビ先輩」

…!!

「は、はい!また会いましょうね!絶対絶対、ぜーーーったいに!会いましょうね!」

またなって言ってくれましたまたなって言ってくれましたまたなって言ってくれましたわー!!神々廻サン……しゅ、しゅき……。


そういえば、ここら辺ってお姉サマとの待ち合わせ場所に近いですわね。えーと確か…ああ、あれですわ!あのおベンチで間違いありません!省エネでいく為にも、座って明日を待ちましょう。という事でワタクシはおベンチに近付きま…

「誰かーー!!引ったくり…!!捕まえてえー!!」

え、え、えええっ!?何、何っ!?引ったくり!?

「どけ!」

「んぎゃぴー!」

酷いですわー!?急に後ろから突き飛ばされましたわー!?…むむむ!さては、あの方が犯人ですわね!!

「待ちなさぁーーーーーーい!!」

許せませんわコンチキショー!!レディにぶつかっておきながら一言も謝らないなんてありえませんわー!!という事でワタクシ、瞬く間に追い付いて怒りのおライダーキーーーック!!!

「うわっ!?」

「さあ、謝って!!今すぐ謝ってくださいまし!!」

「くそ!!離せクソガキ!!」

「あーやーまーれーでーすーわー!!」

あら!?いつまで経っても謝りませんわね!この!この!紳士の極みの神々廻サンを知ってしまったワタクシは昔とはブチ切れボーダーラインが違うんですのよ!

失礼なオジサンをプロレス技で羽交い締めにしていると、お警察を引き連れた見知らぬお姉サンがワタクシに駆け寄って来ました。

「あ、あぁ…ありがとうございます…!」

「君、お手柄だね!」

「へ?」

な、なんか拍手があちこちから聞こえてきますわ。あらま、ワタクシってば人気者?

お警察はワタクシから失礼なオジサンを引き取り、お手錠をガッチャンコしました。おバックを取り戻したお姉サンは中身を確認して…嬉しそうに涙を浮かべながら言いました。

「全部無事です!」

それからワタクシにペコペコとお辞儀をしてきます。

「本当にありがとうございました!凄くかっこよかったです…!」

「え、えへへ…」

いやぁ、それ程でもぉ…。

「あの、これ…お礼と言っては何なのですが、受け取ってください」

「あら!」

お姉サンは未開封の飴チャンを一袋丸ごとくださりました。

「ごめんなさい、渡せる物がこれくらいしかなくて」

「とんでもございませんわ!ありがたく頂きます!」

ワタクシは飴チャンの袋を抱き締めて、笑顔でお礼を言います。うふふラッキー!素敵なおやつゲットですわ!

……そ、それにしてもこんなに注目されていると何となく居ずらいですわね。こんな筈では。とりあえずお警察もいる事ですしこの場を離れましょう。そろーり、そろーり……。


暫く行くと人気のない路地裏がございました。よしよし一安心。此処で暫く息を潜める事にいたしましょう。ワタクシは適当な所でしゃがみこみます。省エネでいくつもりが早々にあんな事になろうとは。それもこれもお食べ物を恵んでくださった方々のおかげですわね。元気が無ければ鬱憤晴らしもままなりませんもの。

予期せぬ報酬こと飴チャンの袋から一つ選んで舐めながら…ワタクシはふと空を見上げます。

…神々廻サンは、今頃何をしているのかしら。

うふふ、何だか楽しいですわ。こんな風に人を想うのは。これがきっと…恋なのですわね…お胸がトキメキキュンキュンMAXですわ…。

…そうだ!今度会った時、飴チャンあげましょ!何味がお好きかしら。うふふふ。まだまだ知らない事が沢山!


飴チャン効果なのかはたまたそうでないのか、ワタクシはあまあま〜な気分でウキウキしながら夜を迎えました。

流石にそろそろ戻っても大丈夫でしょう!おベンチを目指して…ワタクシ再出発!



あら?なんと、おベンチにはお姉サマが座っておりました。待ち合わせにはまだ早いですのに…いえ、ワタクシが言えた事ではないですけれど。

「お姉サマ!どうされましたの?」

声を掛けると、俯いていたお姉サマはパッと顔を上げました。そしてワタクシを見て心底ホッとした様に…今にも泣きそうな顔で微笑みます。

「あ…!会えた…良かった…!」

「うふふ!ワタクシ参上ですわ!」

お隣に座るとお姉サマはおカバンからお弁当箱を取り出しました。

「一日早いんだけど…」

「フライングお弁当!やったー!」

豪華な晩御飯ですわー!

「今食べてもよろしいですか!?」

「うん、勿論」

「ありがとうございます!頂きまーす!」

ひゃ〜!今回も気合いの入った素敵なおかず達!金銀財宝に勝りますわ〜!美味!美味!もぐもぐ!

ワタクシがニコニコ食べていると、お姉サマはぽつりと言いました。

「…あのね。一人言だと思って、聞き流して欲しいんだけど」

ワタクシが頷くと、お姉サマは話し始めました。


私…貴方に嘘吐いたの。

あの日、朝帰りになったのは…仕事してたからじゃ、なくて…。じ、上司に…ホテルに連れ込まれそうになって…必死で逃げて…朝が来るまで、公園のトイレに篭ってたから…だったんだ。

今の仕事、好きだから辞めたくない。でも、セクハラされてたのが広まったら…私、もう職場に居られない。それで、大事にしたくなくて…上の人にも、警察にも言えなくて…ずっと我慢してた。他の人が居ない時に、体触られたり…家に行きたいとか言われたり…気持ち悪くて、怖くて…辛かった。それでも頑張って耐えてたけど…あの日、帰り道、急にホテルに…連れ込まれそうに…なって…。

仕事はしたい…けど、あの上司に会いたくない…会社行きたいけど、行きたくない…。もう、どうしたら良いか…分かんなくて…。


お弁当を食べ終えたワタクシは、泣きじゃくるお姉サマを抱き締めます。

「ごめんね…関係ない、のに…こんな話…しちゃって…」

「気にしなくて、良いのですよ」

「ありがとう…。私、親にも友達にも、言えなくて…」

「よしよし、一人で本当に…よく頑張ったのですね…」

見ず知らずのワタクシしかお姉サマは頼れなかった。それは…ワタクシだけがお姉サマを救えるという事。ワタクシはここぞとばかりに質問を繰り出そうとしました、が。

「あんな奴…死んじゃえばいいのに…」

すっと引っ込めました。あらまあ!なんて事!そうと決まれば話は早いですわ!

「そのお上司、なんてお名前ですの?」

「ん…えっとね」

ふんふん。成程!なんという偶然!お姉サマのお上司、ワタクシ知っておりますわー!

「お姉サマ。ご安心くださいませ」

ワタクシは飴チャンを一つお姉サマに手渡して、笑顔で言います。

「絶対に、アナタを助けますわ」

「ほ、ほんと?」

「ええ!だからワタクシを信じて…明日はちゃんと、会社に行ってくださいな」

不思議そうにしながらも、お姉サマは頷きます。

「うん…分かった」


お姉サマと別れて、ワタクシは目的の為に行動を開始しました。

スタンガンの調子は…うん、良好ですわね!ロープもちゃんと持ってます!

腕が鳴りますわー!機会を逃してしまってましたが、ずっとずっとずっと聞きたかったのです!今回は結果的に聞く必要が無くなりましたけども!ワタクシ、お食べ物を恵んでくれた方にはいつもこう尋ねておりますの。

『殺して欲しい人はいますか?』 と!

それだけがワタクシの取り柄!!顔以外なんの長所もない無能なワタクシが、唯一出来る事!!

さあ、お姉サマに恩返しいたしましょう。頑張った子は報われなければいけないのですわー!




【Interlude.1】

49 名無しさん
今回の被害者、セクハラおじさんだったらしいな
会社の若い子達狙いの

50 名無しさん
きも
最低

51 名無しさん
おっさんざまぁwwww

52 名無しさん
セクハラはアウト
そら恨み買うわな

53 名無しさん
女の敵
◯ねばいいのに

54 名無しさん
>>53
もう◯んどる◯んどる

55 名無しさん
女の子達ホテルに連れ込んでたらしいな

56 名無しさん
>>55
それ
なんであんな豚野郎が良い思いしてたのに俺はこうなんだろって惨めな気持ちになったわ

57 名無しさん
今回のもあの◯人鬼なんかな
女の味方だったり?

58 名無しさん
それか女の可能性

59 名無しさん
女神様じゃん
ファンになりました

60 名無しさん
>>59
女神様は草

61 名無しさん
>>59
どうせ男だろ

:
:

104 名無しさん
最近、女神様のニュースぱったりだよな

105 名無しさん
女神様も忙しいんだよ

106 名無しさん
通り魔は増えてるっぽいけどね

107 名無しさん
最近暖かいからな
やべーのが出てくる季節だわ

108 名無しさん
冬眠ならぬ春眠しといてもろて

109 名無しさん
それにしても被害者からしてやっぱ女神様は活動停止中っぽいよなー
残念

110 名無しさん
女神様って何でこんなに情報出ないんだろ

111 名無しさん
>>110
尻尾掴ませないよね

112 名無しさん
◯人の為に生まれてきたみたいだな

113 名無しさん
神出鬼没だしまじで女神様の可能性

114 名無しさん
◯されないように真面目に生きるわ

115 名無しさん
>>114
俺も

116 名無しさん
通り魔の事何とかしてくれないかなー女神様




【Chapter.5】

ひと仕事ならぬひと恩返しを終えたので〜…ワタクシ、この度拠点を変えました!えっちらおっちらと移動めっちゃ頑張りました!始まる新生活ですわー!

知らない所に来てまず最初に行うのは…勿論、お監視カメラの場所を把握して頭に叩き込む事!基本のきですわ!やむを得ない場合を除き、極力おカメラに記録されないように心掛けております!幸いにも小柄ですのでね。死角に入るのはお手の物!神々廻サン程大きかったら苦労しそうですわ〜。

…ああ、愛しの神々廻サン。また会えますかしら。会えますわよね。ふふ。


さてさて。活動予定範囲内のおカメラはこれくらいかしら。ぼちぼちお食べ物を調達しなくては。ほーんと、おカラスのせいでお財布無くなって気分最悪ですわー。萎え萎えの萎えですわー。こんな時、神々廻サンが居てくれたら気分も晴れますのに!

ワタクシはおカメラの視線を掻い潜りながら歩きます。前居た所もそうでしたが、此処も深夜徘徊の若者が多いみたいですわね。溶け込めるので助かりますわ。そしてどうやら見た所によると女の子達の割合が高いみたいです。グループみたいに固まっている子が大半…なのかしら。複数の方が安全ですもんね。ワタクシは言うまでもなくおひとりサマですけれどー!おほほほー!

「ねーねー」

ふと、おエナジードリンクにおストローを刺して飲んでいたワタクシと同じくソロらしい黒髪の女の子に声を掛けられました。

「きみー新しい子ー?」

「はい!新入りですわ!」

「そかーよろしくねー」

「よろしくお願いいたします!」

ペコーッ!と勢い良くお辞儀すると、女の子は超元気だねーと笑いました。お話するの楽しくて好きなので、ワタクシは会話を続けるべく尋ねます。

「アナタは此処、長いんですか?」

「んー…1ヶ月くらいかなー」

「そうなんですのね!」

おキャリーバッグに凭れながら、女の子は続けます。

「家、帰りたくなくなっちゃったんだー」

「あらま」

帰るお家があるのに帰れない…さぞかし苦労していらっしゃるのですわね。こんなにお若いのに…。

「…うちの親、毒親でさー。ぜーんぜん話通じないし、このままだとうちがおかしくなるーと思ってー。もういいやー出てこーみたいなー」

「ワタクシもそうでした!」

「じゃあ、仲間だねー」

二人で笑い合います。

「うち、友達居ないしー見かけたら話し掛けてくれるとうれしーなー」

あら?意外ですわね。気さくで良い子ですのに。

「分かりましたわ!」

「えへーありがとー。ここら辺ぶらぶらする事多いからさー。よろしくねー」

女の子は手をヒラヒラと振ります。ワタクシは服からちらりと覗いたお手首に違和感を覚えました。

「それ、怪我ですか?」

すると女の子は気まずそうな表情で、隠す様にお袖をぐいっと引っ張ります。

「……あー、これはー……気にしないでー」

へらへらりと笑っていますが、先程の楽しそうな笑顔と違い作り笑いだというのが分かります。もしかして…リスカなのかしら。

「良かったら、事情を話してくださりませんか?一人で抱え込むのは良くないですわ」

お姉サマもそれで随分追い詰められていましたもの。ワタクシの申し出に女の子は俯いてきゅっと唇を噛んでから、ぽつりと口を開きました。

「…駄目だって、分かってるんだけどねー。親への仕返しのつもりで…つい…やっちゃう事があって…」

「仕返し?」

「うん。うちの体って、親が作ったものでしょー。だからうちが傷付けば…少しは仕返しになるかなーって」

「でも…そんな事をしてもアナタの親御サンは…」

「…あはー。そうだよねー。ほんと、うち…馬鹿だよねー…」

女の子はおストローにお口を当てました。とっくに中身が無くなっているのか、空気を吸う音が聴こえます。

「こんなだからさー周りの子も引いちゃってー。いつも一人なんだー。自業自得なんだけどさー」

おゴミ箱にお缶を捨てて、女の子は力無く笑います。

「なんかねー。たまーに…ほんと、たまーにだけど…うちってなんで産まれてきたんだろーって思っちゃう」

「…分かりますわ」

「ほんとー?」

「めーーーーーっちゃ!!分かりますわ!!」

「うわーお」

ワタクシは女の子の手を取ってブンブンと上下に振ります。すると次第に面白そうに笑ってくれました。

「ふふふ、なんかたのしーねー」

「そうでしょう!楽しいは作れるんですわ!」

「わー名言だー」

ぺちぺちと拍手してくれたので、ワタクシは熱弁します。

「お互い大変ですが、生きてたらまた会えます!会えたらこうやってお話が出来ます!お話が出来たら楽しくなります!」

「そだねー。うち、頑張って生きるー」

「その意気ですわ!」 

「うんー。いっぱいお話しよー」

「是非是非!」


それから暫くキャッキャしたのですが…ワタクシはお食べ物探しへ、女の子はお洗濯しにおコインランドリーに行くという事で、自然と解散の流れになりました。

「またねー」

「はーい!」

手を振り合って、ワタクシ達は笑顔で再会の約束を交わします。ふふふ!お友達出来ちゃいましたわ!


お自販機の下からお小銭でも発掘しようかしらと歩きつつ考えていると…道端でたむろしている女の子達のぼやきが聞こえてきました。

「もーやだー死にたいー」

「あたしもー生きるのめんどいー」

「皆で一緒に死ぬー?」

「あははーそれいいねー」

…つい気を取られていたら、誰かにぶつかってしまいました!でも、転びはしませんでしたわ。だって…。

「神々廻サン!?」

が、受け止めてくれましたものーーーー!!!LOVEズッキュン!!!王子サマですわーーーー!!!

「また会ったな」

「は、はいぃ…!!」

全身からおハートマークを迸らせるワタクシを見て神々廻サンは、ふっと笑いました。はあ、はあ…神々廻サン成分が身に染みて…過呼吸になりそうですわ…。

「オレが電柱だったらケガしてたぞ」

「てへへ!気を付けますわ!」

もし神々廻サンがお電柱だったらワタクシしがみついて離れませんわ!おほほほ!

「…にしても偶然だな。この街に来てるとは思わなんだ」

「ワタクシ気ままな旅人の筈…つまり、神々廻サンに引き寄せられてしまったのかもしれませんわ!」

「磁石かよ」

「ワタクシ達、S極とN極の関係ですのね…」

「反発する方だと良かったのにな」

きゃっ!それってそれって、何気認めてくれてるって事ですわよね!素直じゃない所が愛おしい!すき!

「そうそう。此処ら辺、割と物騒な地域だから…一人で行動すんのやめといた方が身の為だぞ」

「あら、お詳しいのですね」

「昔住んでた」

「成程!?」

では神々廻サンの故郷!?いやーんワタクシってばナイス判断!!

でも…危ないなら確かにやめといた方が良さそうですわね。違う場所を拠点にしようかしら。とはいえせっかくあの女の子とお友達になれたのに…うーん…。

悩むワタクシに、神々廻サンがぼそりと言います。

「…オレ、暫くは此処に居る予定」

「奇遇ですわね!ワタクシもそのつもりでしたわ!」

「…」

「神々廻サン?」

「…別に」

え?え?どしたんですの?なんでちょっと拗ねてますの?

「一人で良いんなら、ほっとくけど」

察し。

「心配してくれてるんですか!?」

「それなりに」

「ワタクシの事好きなんですか!?」

「それなりに」

やったー!!それなりに好いて貰えてましたわー!!

「何で嬉しそうなん…」

「えー!?嬉しいに決まってますわよー!!」

ぴょんこぴょんこ飛び跳ねている最中、ワタクシはおポケットの中に3つの飴チャンを取っておいていたのを思い出します。

「そーだ!神々廻サン、これあげますわ!」

「どーも」

やったー!渡せましたわー!おミッションクリアー!

「この中だと、どの味がお好きですか?」

おリンゴとおレモンとおブドウです!

「全部普通に好きだけど」

「へえ〜!」

「ニヤニヤすんなし」

また一つ、神々廻サンに詳しくなっちゃいましたわ!お脳内おメモメモ…。

「…で、どっちなん。一緒に来るんか来ないんか」

「一緒に行きまーす!!」

即答すると、やっぱりと言いたげな顔で神々廻サンはお鼻を鳴らします。

「あーあ。暫く賑やかになりそー」

イェイイェイイェイ!!賑やかしますわーーー!!ドンドンパフパフ!!エアおタンバリンシャンシャンシャンシャン!!


ワタクシが文無しだと薄々察していたらしい神々廻サンは、当分奢ると言ってくださいました。神サマ仏サマ神々廻サマ。そんな訳で今ワタクシは、おテイクアウトしたお牛丼をおベンチにて神々廻サンと並んで食べております。

ほあーーー美味ーーー…っぱお肉ですわお肉…人類はお肉を食べたら幸せになるよう設計された生き物なのですわ…そしておライスとの相性…おバッチグー…こんなん美味に決まってますわ…。もう神々廻サンには是非是非お礼したい所なんですが、そんなん要らんの一点張りなのですわ。これではどうしようもありません。えーん!ワタクシの美学がー!

と・こ・ろ・で。

神々廻サンは意外にも少食らしく、最少サイズのお牛丼をちまちまと食べておられます。一口が小さいの、可愛いですわ〜!ちなみにワタクシはおキングサイズを食べてますわ~!

「街、もうぐるっと見たんか」

「あ、はい!」

「じゃ、案内は別に要らんな」

ぎゃー!!神々廻サンツアー参加したかったですわー!!なんで下見しちゃったんですのワタクシのアホー!!

「…この街、どう思った?」

「深夜徘徊する方が多い印象でしたわ!」 

「だよな。……あそこに居る奴ら、オレあんま好きじゃない」

「そうなんですか」

まあ確かに…ワタクシのお友達はさておき…たむろしていた子達はちょっと…。

「軽いノリで死にたいって口にする奴ばっかりだし」

「分かりますわ〜」

そうそうそこなんですのよ〜。例え冗談でも聴いていて良い気持ちにはなりません。

神々廻サンは小さいお声でぽつりと言葉を零します。

「本気で死にたいけど死ねない人間の気持ちなんて、分かんねーんだろな」

ゎ、ゎぁ………物憂げなお顔もかっこいいですわ…これで17歳なんて詐欺ですわ…。

「…オマエ、なんかくだらねー事考えてるだろ」

「神々廻サンは今日もイケメンですわ〜」

「やっぱくだらんかった」

「くだらなくなくなくないですわ!」

「はいはい」

ふふふ!照れちゃって!んもーぅ!は〜…神々廻サンと暫く一緒に居られるなんてワタクシ感激!新生活、大充実間違いナッシングですわー!!




【Chapter.6】

神々廻サンはワタクシのお膝をお枕にしてグースカタイム中です。んひひひ…可愛い可愛い…気に入って頂けたようで何よりですわー。ワタクシお肉全然付いてないお骨皮人間ですのに!光栄!!

…ってあら?あの子は!

おキャリーバッグを手にしたワタクシのお友達が、反対側の歩道を歩いているのを発見しましたわ!

「ごきげんよう〜!!」

両手をブンブン振ってアピールしたら気付いてくれました!ちゃーんと横断歩道を使って、てててっと此方に近付いて来ます。

「わーまた会えたー」

「また会えましたわー!」

にこぱーと嬉しそうに笑ったお友達は、神々廻サンを見て目を丸くします。

「んー?この人だぁれー?」

「ワタクシのダーリンです!」

「ただの腐れ縁だろ」

「あらっ!起きてらしたのですか!?」

寝たフリだなんてイ・ケ・ズ!そ、それともワタクシのお膝枕を少しでも長く堪能しようとして…!?いやーん!24時間365日いつでも大歓迎ですのにー!!

むくりとお体を起こした神々廻サンは、ワタクシとお友達を交互に見て言いました。

「どういう関係なん」

「フレンドです!」

「ねー友達ー」

「いつの間に…」

お友達と抱き合ってキャーキャーしてると、神々廻サンは段々遠い目になっていきました。渋いお顔も良きですわー!

…さて。ワタクシはそういえばと、お友達に尋ねます。

「これからご用事はありますの?」

するとお友達はゆっくーり首を横に振りました。

「んーんー。なーんにもないよー」

「でしたら!」

ワタクシ名案がありますわ!

「一緒に遊びましょう!」

暇な時はそれが最適だと思います!お友達はぺちぺちと拍手してくれました。

「いいねーさんせー。近くにゲーセンあるよー」

「やったー!では神々廻サン、ボディガードは任せましたわ!」

「調子良いなー…」

「よろしくお願いしまー」

「しまー!ですわー!」

お友達と二人でぺこりんしたら、神々廻サンはやれやれと溜息を吐きつつも頷いてくれました。

「…はいはい」


うわー!おゲーセン凄いですわー!賑やかですわー!うるっせーですわー!どれくらいうるっせーかと言いますと、おヘッドホンを付けている神々廻サンが眉を顰めるレベルですわー!お耳キーン!

「ねーねー、プリ撮ろー」

ワタクシの腕に自分の腕を絡ませているお友達が、楽しそうに声を掛けてきました。お返事は当然!

「良いですわよー!」

お写真撮るだけで云百円だなんてワタクシからしたら正気の沙汰じゃありませんが、だからこそ気になるというものですわー!

「やたー。うち払うねー」

「あら、良いんですか?」

「もちもちー。付き合ってくれるの嬉しいしー」

良い子ですわ〜…。

「バイトで貯めてたからー安心してー」

まじ良い子ですわ〜…。ところで。

「神々廻サンは来ないんですか?」

「お二人でどーぞ」

何故か若干遠い所に立っている神々廻サンは、しっしと手を振りながらそう言いました。

なんですのその絶妙な距離は!?心の距離の現れだったらワタクシギャン泣きいたしますわよ!?

…ま、気を取り直しまして!

「いざ!」

「いざー」

ワタクシ達、おプリに突入!


はい、スライスチーズ!パシャパシャ!パシャパシャ!なんか楽しいですわねーこういうの!

撮り終えた後はお写真をおデコレーション出来るという事で、ワタクシはお友達と肩を寄せ合って画面をぽちぽちします。…んぎゃー!?元々パッチリなワタクシのおめめが化け物級におビッグになってしまいましたわ!?えーと、取り消し取り消し…。

焦るワタクシの隣で鼻歌を歌いながら、お友達はおペンで文字を書いていました。ちらりと見てみたらそこには。

『ズッ友』

とありました。まあ…良い響き…おズッ友…。ふふふ。


ワタクシは、出てきたおプリのおシートをお店備え付けのおハサミで半分にいたしました。それからその片割れを手渡すと、お友達は瞳をキラキラ輝かせます。

「かあいーうれしー」

「ほんと、おキュートですわね!ワタクシ達!」

超可愛いですわー!お顔が良いですわー!ワタクシのごっついお隈もお加工で消せましたし最強ですわー!

お友達はそれはもう嬉しそうにるんるんしながら口元を緩めています。

「うち、宝物にするねー」

「ワタクシもですわ!思い出の一枚ですわ!」


存分にキャピキャピ!イチャイチャ!してから、お椅子に座って腕を組んで目を瞑っていた神々廻サンと合流します。

「お待たせいたしましたわ!ほらほら、見てください神々廻サン!すんごく可愛くないですか!?」

「ちょー盛れたー」

面倒臭そうにちらりと視線をおプリに送った神々廻サンでしたが…

「ほんとだ。かわいーじゃん」

と褒めてくださいました!やったー!

「実物はこんなだけど」

ちょおいおいおいおいおいおーーーーーい!?!?一言余計ですわよ!?!?

「おにーさん照れてるー」

「変な事言うなし」

「かあいー彼女、大事にしないとー」

「彼女じゃないって」

「えー?うちに取られちゃうよー?」

いたずらっ子みたいな笑みを浮かべて、お友達はワタクシに抱き着きます。すると神々廻サンは困った様に言いました。

「……それはやだ」

ワタクシは思わずお友達とお顔を見合わせます。ぱちくり。ぱちくり。神々廻サン、今なんと?

お友達はワタクシへにこーっと笑顔を見せてから、神々廻サンに向き直りました。

「だったらーちゃんと幸せにしてねー。じゃないと、おこだよー」

人差し指を立てた両手をこめかみの辺りに添えたお友達はちらっと此方を見て、にーっと笑います。思わずひしっとしがみつくと、よしよーしと頭を撫でられました。えへぇ。くーんくーん。良きおズッ友を持てて…ワタクシ…感激…。


その後は…おUFOキャッチャーをしたりお車のおレースゲームをしたりおゾンビ達をぶっ殺したりお太鼓を叩くゲームをしたり……ワタクシ達、超満喫いたしました!!

柄の悪そうなお兄サン達もちらほら居ましたが、神々廻サンのおかげで安全に遊べましたわ!神々廻サンがちらっと見ただけでそそくさと離れていくんですの。なんか爽快でしたわ。ワタクシではこうはいきませんもの。頼もしい〜!

おUFOキャッチャーの景品のおキーホルダーをおキャリーバッグに付けながら、お友達が嬉しそうに言います。

「こんなにたのしーの、すんごい久々ー」

「それは何よりですわ!ワタクシもとっても楽しいです!」

笑い合った後、お友達はぽんと手を打ちます。

「そいえば、まだ名前教えてなかったねー」

確かに!聞いてませんでしたわ!

「と言いつつー…うち、キラキラネームだからー…名乗るの恥ずかしくてー…」

キラキラネーム…何だか凄く身に覚えが…いえ、もう捨てた名前ですし!忘れましたわ!はい!忘却!滅却!

「無理しなくても良いですわよ!お気持ち分かりますもの。だから、これまで通りでもぜーんぜん良いですわ」

「ほんとー?」

「実はワタクシもですね、名乗れるお名前がないので!」

「ふふ、そかそかー。じゃあーこのままで仲良くしよー」

「ええ!」

いえーい!これぞ、意気投合!


その後、ワタクシ達はおハンバーガーのおファストフード店に行きました。おファストというだけあって注文してから秒で提供されましたわ!お牛丼とタメ張れますわね…やりおる…。

とまあそれはさておきワタクシが注文したのは…おチーズバーガー!あとおポテトのLサイズと、おズッ友オススメのおコーラですわー!

「ハンバーガーをコーラで流し込むとー最高の気分になるよー」

「成程!やってみます!」

もぐもぐもぐ!ごくごくごく!

「っぷっはぁーーーーーー!!堪んねぇですわあ!!」

「でしょー」

「一瞬おっさんが居たぞ」

おほほほ気のせいですわよおほほほ。

「しかもケチャップ顔に付いてるし」

「え?何処ですか?」

「此処」

神々廻サンが自分のお顔を指さして教えてくれた箇所を、ワタクシふきふき。

「逆」

逆をふきふき。

「取れてねえ」

あーーーーーーん!!どうしてですのーーーーーー!?

「おにーさん、拭いてあげたらー?」

お友達、にまにまにんまりこ。ワタクシ、うるうるうるりんこ。

「なんでオレが…ガキじゃあるまいし…」

「じゃあうちがやってあーげよー」

「えへへ!おズッ友は優しいですわー!」

二人で、ちらっ。

「…」

ちらちらっ。

「……」

ちらちらちらっ。

「一生続ける気だろ…分かったよもう…」

いえーい!!折れてくれましたわー!!

「で、では!お願いいたします!」

「何故瞼を閉じる」

「そーれ、ちゅーしろー、ちゅーしろー」

んもう!お友達ってばぁん!ま、普通にお紙ナプキンで拭いてくれるんだろうな〜と思いながら待機していましたら。おテーブルがカタンと音を立てて。

「きゃー大胆ー」

え?え?え?何?何?何?今の感触もしかして??????ぺろ??????ほっぺ??????ぺろ??????ほっぺろ??????

瞼を開けると、むすーとしつつも頬を染めた神々廻サンがおりました。

「おにーさん、やるじゃーん」

「うっせー」

あばばばばばはばばばばワタクシ脳の処理が追い付かないですがとりあえずおハンバーガーをパックンチョします!!!はい!!!おケチャップ装着!!!

「神々廻サン!!もう一回お願いします!!」

「二度とやらん」

そ、そ、そ、そんなぁーーーーーー!?!?!?

あ、ちなみに今回はお友達が拭いてくれましたわ。おほほ!


はてさて楽しかった時間もそろそろ幕引きです。お友達、この後用事があるらしいのです。えーん残念…。

月明かりに照らされたお友達は、ぐーんと伸びをして言いました。

「…うち、生きてて良かったー」

「まあ!」

「へへーズッ友のおかげー」

なーんて嬉しい事を言ってくれますの!全くもう!

「また遊びましょ!」

「うんー約束ー」

立てられたお友達の小指に、ワタクシも自分の小指を絡ませます。指切りげんまん!

「生きてたらまた会えるー、会えたらお話が出来るー、お話が出来たら楽しくなるー」

「あら、覚えてくれたのですか!」

「うんー。うち、この言葉すきー」

ぎゅーっと抱き合って、離れて、ワタクシ達は手を振り合いました。

「それでは、お気を付けて!」

「そっちもねー。まあーボディガードいるから大丈夫だと思うけどー」

にししとお友達が笑うと、神々廻サンはワタクシの頭に手を乗せてぐりんぐりんと撫でてきました。照れ隠し?それって照れ隠しですかー!?可愛いですわ!


ワタクシはお友達の背中が見えなくなるまで見送りました。

また一緒に遊べたらいいなと、思いながら。




【Chapter.7】

あれから一週間が経過しました。

ワタクシは神々廻サンと一緒に、変わらず街で過ごしておりました。神々廻サンは、満足したしそろそろ違う所行きたいって仰ってるんですが…それすなわちボディガードもうしないからそっちもこの街離れろって意味なのは理解しておりますが…ワタクシの我儘で待って貰っています。

だって、ワタクシには大切なお友達がおりますもの。この街を出ていくのなら、せめてお別れくらいは言いたいではないですか。そんな訳で会えないかなーと思って此処に居るのですが…。

あの日以来、お友達の姿は何処にも見当たりません。

もしかして違う街に行ってしまったのかしら、と一瞬考えましたけど…有り得ませんわ。あの優しい子が黙って居なくなってしまうとは、とても思えないですもの。

という事で!

「お友達捜索隊、出発ですわー!!」

「最初からトばし過ぎたら後半で死ぬぞ」

「お出鼻を挫こうとしないでくださいまし!!」

「はーいサーセン」

もー!反省してなーい!まあいいですわ!レッツラゴー!


とりあえずお友達が行きそうな場所を探しましょう!

まずは…おコインランドリー!

…居ませんわね。ハシゴしまくったけど見つけられませんでした。

次…おゲーセン!

…居ませんわね。おプリの機械の中もちゃんと全部探しましたが見つけられませんでした。

最後…おハンバーガー屋さん!

「居ませんわーーーー!!!」

「入れ違いの可能性もあるしなー」

えーん!人探しって難しい!おハンバーガー美味しい!もぐもぐ!えーん!

そんなこんなで休憩がてらのお食事中ですわ。おケチャップを見るとあの時の事を思い出してときめいてしまいますわ。おほほ。

食べ終えたおハンバーガーの袋をくしゃっと丸めながら、神々廻サンはお口を開きます。

「にしても、アイツのチビ先輩への懐きっぷり考えたら、毎日会いに来てもおかしくねーのに…何で…」

「そう思います?えへへ」

「…オレ、結構真面目に話してる」

その言葉通り真剣そうな神々廻サンの様子に、ワタクシは緩んでいた顔を引き締めます。

「ここまで会えないのは流石に不自然過ぎる。何かあったと考えた方が良いかもしれん」

「な、何か…とは…」

「…」

「…」

「明るい内に、路地裏も見てみよう」

「はい…」


うひー、昼間でもやっぱり薄暗いですわ。流石は路地裏。こんな所にあの子が一人で来ますかね…?

「神々廻サン…考え過ぎなのでは…」

「だと良いけど」

神々廻サンは顎に手を添えて、うーんと唸ります。何やら考えているご様子。ワタクシはあまり…考えないでおきましょう。

失踪して一週間。物騒な街。

この二つの要素だけで…もう…何だか…気が滅入りそうですわ。


路地裏巡りを終えて、拠点の街へ戻る道中。

「なあ」

「どうしましたの?」

神々廻サンが地面から何かを拾い上げました。


「これ、アイツのだよな」


それは、おキーホルダーでした。おUFOキャッチャーで取って、あの子がおキャリーバッグに付けていた…うさぎのおキーホルダー。

「どうして、こんな所に…」

どうしてと口にはしたものの、ここまで来たら何があったのか考えなくても分かってしまいました。神々廻サンもそうみたいで、ワタクシにおキーホルダーを手渡した後こう言います。

「…もう探すのはやめとこう。多分、オレらも危なくなる」

おキーホルダーをキュッと握り締め、ワタクシは頷きました。本当は頷きたくなかったけれど…今は頷くしかありませんでした。


人通りの多い、いつもの場所へ戻りました。ワタクシはおベンチに座り、おキーホルダーを見つめます。

意気消沈ですわ。まるで深い海の底に沈められた気分です。

ワタクシの隣に座っている神々廻サンも沈黙を続けていましたが、やがて口を開きました。

「警察に相談出来りゃ良いんだけど。オレ…訳あって、警察と関わるのは避けたくて」

「ワタクシも…お警察は…」

二人で暫し、黙り込みます。

「…悪い、何もしてやれん」

「いえ、そんな…神々廻サンは悪くないですわ。それに、今もワタクシに付き合ってくれています。だから謝らないでくださいまし」

神々廻サンは、ワタクシの肩を優しく抱き寄せてくれました。それからまた静寂が訪れます。いいえ、辺りは騒がしいのですけれど…でも…そう思ったのです。


他の誰かが気付いて、代わりにお警察に言ってくれるまで待つしかない……けれどあの子は家族と疎遠だし、ワタクシ以外にお友達が居ません。捜査が始まるまでにどれだけの時間が掛かるのか。そもそも捜査なんて始まらない可能性もありますわ。

ワタクシに出来るのは、殺人だけ。

ですが犯人の詳細が掴めていないのに行動を起こす訳にはいきません。更に今回に至っては事前調査が容易ではなく、危険を伴うのが分かっています。相手は複数なのか単独なのか…前者であればワタクシに勝ち目はない。後者の場合でも、いつもの様に不意を突けなければ体格差で返り討ちにされてしまいます。

ええ、そうです。悔しいけれど詰んでしまっている。でも、何か…何か方法がある筈。

ここまで考えて。ワタクシは、お礼の関わらない純粋な殺人を起こそうと考えている事に気が付きました。こんなのは初めての時以来です。

つまりワタクシは今…猛烈に、怒っている。

ああ…全部思い過ごしだったなら。悪い夢だったなら良いのに。目が覚めたら笑顔のあの子が居て、おはよーまた会えたねーって言ってくれたら…どれだけ救われる事でしょう。

涙がじわじわ上がってきたかと思えば、次の瞬間にはぽたりと雫が落ちました。

「…なあ、チビ先輩」

鼻を啜って、ワタクシは答えます。

「どうしました?」

「すぐにでも、この街を出るべきだ」

…そう、ですわよね。正しい判断です。でも…ワタクシはどうしたいと思っている?

ええ。そうですわ。もう決まっておりますわ。

ワタクシは首を横に振りました。すると神々廻サンは、やれやれと肩を竦めます。

「まあ分かってたけど」

「ふふ、流石ですわね」

「…で、どうする気なん」

「どんな手を使ってでも犯人をぶっ殺します。でも…一人では出来ません。だからお願いがあります」

一呼吸置いて。神々廻サンの目を真っ直ぐ見て。ワタクシは伝えます。


「共犯者になって頂けませんか」


神々廻サンは、ワタクシから視線を逸らしませんでした。



あれから数日経ちまして。

ワタクシ…現在一人で路地裏付近を歩いております。自暴自棄になったとか神々廻サンに見捨てられたとか、そういう訳ではありません。作戦の一環です。

今回の相手は受け身でなければ土俵に引きずり出す事が出来ません。だから現状一つだけ分かっている事実…若い女の子を狙うという要素を利用する事にしたのです。ワタクシが囮になって犯人の注意を引き付け…その隙に神々廻サンに不意を突いて貰って犯人の意識を奪い…拘束した後に事情聴取をし…返答によってぶっ殺すかを決める、という作戦ですわ。

正直これしか打つ手がありません。しかしそれすら、ワタクシ一人では取れない選択でした。神々廻サンが協力してくれるおかげです。感謝してもしきれませんわ。


ちらりと後ろを振り返ると、神々廻サンがついて来てくれているのが遠くに確認出来ました。

…ふふ、何だか安心いたしますわ。それに、誰かと協力して一つの目的を成し遂げようとするのは初めてで…少しドキドキいたします。全て終わったら、ワタクシの事…全部打ち明けたいですわ。それから神々廻サンの事も教えて欲しいものです。殺人を犯そうとしているワタクシを止めなかった所か協力してくれるのには…理由がある筈ですから。


では、改めて気を引き締めましょう。

危険なのは百も承知。しかし恐ろしい出来事を踏み越えて生きてきたワタクシは、とうに恐怖のメーターがぶっ壊れています。つまり恐るるに足らず。

さあ食い付きなさい、ゲス野郎。地獄に叩き落として差し上げますわ。


後方からやって来た黒いおワゴン車が、ワタクシのお隣で急停車します。

「え」

いや、ちょ!?

複数の男がお車から出て来たかと思うと、瞬く間にワタクシお車に押し込まれました!!は!?!?何なんですのこの手際の良さ!!絶対常習犯ですわ!!手練ですわ!!っていうか待ってくださいましこれは想定外!!

連れ込まれる寸前、神々廻サンがまじかー…って反応してるのが遠目からでも分かりました。ほんと、まじかー…ですわ。しかしこれはチャンスでもあります。狭い車内なら背の小さいワタクシの方が動きやすい。地の利は此方にありますわ。

いっちょ乗り込んでやろうじゃないですの!!お覚悟ですわー!!




【Chapter.8】

「こんばんはー」

「危なかったね。誰かにつけられてたよ、君」

「可愛いねー大人しくしててねー」

車内の広い後部座席で、ワタクシは三人の男に囲まれていました。運転席に一人居るのは間違いないとして…どうやら助手席にも人が居るようです。つまり五人。

これから連れて行かれる場所が何処かは存じませんが、着いた先で敵が増えるとしたら…よろしくない。決着をつけるなら移動中の今しかありません。手と足をお縄で縛られていますが、こんなものは仕込んでおいたおナイフでどうとでもなります。

問題はタイミング。いつ行動に移すかが要ですわ。一番手っ取り早いのはおナイフで首を掻き切ってやる事…かしら。とりあえず後部座席の三人を殺れば、後の二人の処理もしやすいでしょう。

…まあ。まずは何よりも、この人達があの子を殺した犯人かどうかを確かめる事が先ですが。口におテープが貼られていなければもっとスムーズにいけますのに。大変もどかしいですが、幸いにもお喋りな様子ですし…いずれボロを出す事でしょう。

ワタクシは脳内で何度も殺人おシミュレーションしながら、その時を待ちました。

「やっぱ穴場だわーあそこ。可愛い子多い上に家出してる子ばっかだし。ヤリたい放題ってこの事だよなー」

覆面の男達はそれはもう楽しそうに笑います。ワタクシはある言葉が引っ掛かって、一旦思考を中断いたしました。

ヤリたい放題…ですって?

「この前の子すげー良かったよなー」

「あーあの黒髪の子」

「現金も結構持ってたし、かなり優良だったよな」

現金を持ち歩いている…黒髪の女の子…まさか。

い、いいえ。落ち着いてワタクシ。まだ早いですわ。それだけでは特定出来ません。大多数に当てはまりますもの。

「あの時撮った動画、めっちゃ良いオカズになってるわ」

「分かる〜」

ちらりと此方を見た男の一人が言いました。

「君も見てみるー?」

救いようのないお変態かつお馬鹿な人達。反吐が出ますわ。しかしこれはチャンス。被害者をこの目で確認出来ます。

ワタクシは頷きました。するとおスマホを取り出した男は、画面を此方に見えるよう突き付けます。

再生された動画。

そこに…そこに映って、いたのは。

「あーなんか見た事あると思ったら…君、この写真に写ってる子じゃない?」

そう言って男が見せて来たのは…ワタクシがおズッ友と撮った、おプリでした。

「おいおい、お前持ってたのかよー捨てとけよー」

「可愛かったからさーついつい。思い出の品的な?」

「きめえ〜」

「ズッ友なんて素敵な関係だよねー可愛がってから同じ所に行かせてあげるよー楽しみにしててねー」


何言ってるんだ。こいつら。


返せよ。

ぼくの友達、返せよ。

あんな目に遭わせて泣かせて動画撮って殺した挙句宝物まで奪ったなんて。考えうる最悪の結末を用意してくれやがった。


殺す。こいつら全員、絶対に殺す。


…ごめんなさい。ズッ友だったのに助けてあげられなかった。なんであの時一人で行かせてしまったんだろう。

あの子は、どんな想いで死んでいったんだろう。


「あー。見てたらなんかムラムラしてきたー」

「お前!抜け駆けかよ!」

「本番前の味見って事で見逃してくれって」

そう言うと、男はぼくのTシャツを捲った。パンツも剥ぎ取る。

「あらら。なんか可哀想な事になってんねー」

「マジ?あ、ほんとだー。前の方使えそうにないな」

「後ろでよくね」

「せやな」

はは…この反応は、初めてのパターンだな。穴があれば何でも良いのか。心底軽蔑する。

…まあ、どうでもいいや。ぼくの股間に三人共釘付け…今が絶好のチャンス。

ありがとうお母さま。ぼくをこんな体にしてくれて。



あー、あー、あー。クールダウン、クールダウン!

ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ……


はい、ワタクシですわー!!


停止した黒いおワゴン車から、ワタクシ無事脱出いたしました。暫くすると…神々廻サンのお姿が!走って追いかけてくれていましたのねー!

「…元気そうだな」

「はい!無事ですわよー!」

おピースしてから、ワタクシは続けます。

「神々廻サン、最後の仕上げがございますの」

「証拠隠滅とか?」

「ザッツライトですわ!」

流石神々廻サン!お察しが良い〜!


お車の運転席に神々廻サン、そして助手席に座るワタクシ……何だかおドライブおデートみたいですわー!!

「オレ、無免許なんだけど」

「おフィジカルで乗り切りましょー!」

大きなおワゴン車を運転するには、ワタクシ足が届かなくて…足が届いたとしても今度は前が見えなくなってしまいますのよね。という事で、神々廻サンにお任せするしかないのですわ!

「簡単に言うなし」

「てへ!」

「一体オレに何個罪を重ねさせる気なんだ…このろくでもない先輩は…」

うんざりした様にぼやいてから、ワタクシの指示通り神々廻サンは車を発進させました。

「あとはもう、おアクセルとおブレーキで何とかなりますので!」

「へいへい。意外と簡単なんだな」

「オートマですからね!おマニュアルでしたらガッチャンコガッチャンコしないといけなくなりますわ!」

「よく分からんけど助かったのだけは分かる」

「それと、お信号が赤になったらストップ!青になったら進んでもOKです!」

「流石にそれはガキでも知っとるわ」


ワタクシは犯人達のおスマホをお指紋認証でおロック解除して、お地図を開きました。お気に入り登録されているこの場所が恐らく犯人達のお巣窟。誰か居るのなら根絶やしにしてやるつもりですが、誰も居なくても行く価値はあります。証拠隠滅に便利なお道具があるかもしれません。何せ沢山の人を殺して来た輩のおアジトなのですもの。

「あ、此処を左ですわー」

「うす」

「あらまあ!運転初めてにしては、おカーブ随分お上手ですわね!」

「…そーなん?」

「ええ!自信持ってくださいませ!」

「これでも心臓バックバクなんだけど」

「ワタクシとおランデブーしてるからですか!?」

「犯罪の片棒担ぎながら無免許運転してるからだよ」

んもーう!つれないんだからー!


…あ!

「到着しましたわ!」

「おー」

ワタクシはお車からお地面へシュタッと降り立ちます。海の近くの物置小屋…成程、成程。証拠隠滅の手口が読めましたわ。犯人のおポケットの中からおゲットしたお鍵でおドアを開けると、案の定。

「コンクリ詰めってやつか…」

神々廻サンが呟きます。

そう!まさに一式揃っていたのです。これはラッキーですわ。恐らくお車で好き放題して殺した後、此処に来ておコンクリ詰めにして海に沈めていたのでしょうね。証拠隠滅という意味でかなり有効な手段ですし。ま、自分達が沈められる日が来るとは夢にも思ってなかったでしょうけれど。

「さあ、これからちょっとお骨が折れますわよ!」

「骨粗鬆症で大変だろうけど、まあ頑張ってな」

「ちょちょちょちょ手伝ってくださいましー!?」

ワタクシ一人で成人男性五人をおコンクリ詰めは無理無理の無理ですわー!!

「冗談だよ。ここまで来たらもうどうにでもなれって感じなんで。はい」

自暴自棄!自暴自棄ですわ!元々死んでいるおめめがますます死んでる気がしますわ!素敵!



…さてさて。

ひと仕事終えて、ワタクシ達はおワゴン車で移動しております。行く当ては特にありませんが、とりあえず遠くを目指してますわー。神々廻サンは運転がお上手ですし、無免許でも早々バレないだろうと思いまして。足にも宿にもなりうるお車は使わないと損です!

ちなみに後部座席には元々ブルーシートが敷かれていたので、おゴミ処理した時に血で汚れませんでしたわ。助かりました。一緒におコンクリに詰めたので証拠隠滅もバッチリです。

…それから物置小屋にはかなりの現金がありました。ですので資金は潤沢です。おガソリン代も当分は心配要りません。しっかり大事に使おうと思います。きっと、無念を抱えて死んで行った子達のお金ですから。

「成り行きとはいえ…ここまで付き合わされるとは…」

信号待ちの間、神々廻サンがぽつりと呟きます。

「感謝感激ですわ!」

「離れられなくなったじゃん」

「うふふ…計画通り…」

「マジ?」

「いえいえ流石に偶然ですわよ〜」

ほんとほんと。

「旅は道連れと言いますし!これからも仲良くやっていきましょ!」

ワタクシが笑顔で言うと、神々廻サンは、ふっと笑いました。

「旅は道連れ、世は情け…か」

良い言葉ですわよね。

アナタも、一緒に行きましょう。

形見のおキーホルダーを手に、おプリに映るおズッ友を見つめながら…ワタクシは心の中でそう呟きました。




【Interlude.2】

233 名無しさん
通り魔のニュース、最近ないな

234 名無しさん
我らが女神様がやってくれたんだろ

235 名無しさん
警察より有能

236 名無しさん
天国の被害者達も喜んでるだろうな

237 名無しさん
被害者だけど超嬉しい

238 名無しさん
>>237
成仏してクレメンス

239 名無しさん
怖くて外出するの控えてたから助かる

240 名無しさん
女神様に感謝

241 名無しさん
足向けて寝れねえわ

242 名無しさん
>>241
何処にいるか分からんけど大丈夫そ?

243 名無しさん
逆立ちして寝るんだろ

244 名無しさん
>>243
流石に草

245 名無しさん
皆で逆立ちして寝るか

:
:

504 名無しさん
スレの動き遅いな
やっぱ女神様休憩中だからか

505 名無しさん
今頃獲物探してるんやろな

506 名無しさん
>>505
ハンターかな?

507 名無しさん
まあ平和なのは良い事だ

508 名無しさん
ニュースになってないだけで今も何処かで犯罪は起きとるやろ

509 名無しさん
>>508
たし蟹

510 名無しさん
人間なんてそんなもの

511 名無しさん
犯罪者がいなくなる日なんて来ねえわな

512 名無しさん
悲しいね

513 名無しさん
女神様がきっと今も人知れず世直ししてくれてるよ

514 名無しさん
救世主定期

515 名無しさん
ファンクラブでも作ろうかな

516 名無しさん
>>515
出来たら教えて




【Chapter.9】

「大分遠くまで来たな」

「そうですわね!」

オレ達は今、高速道路のパーキングエリアに滞在している。

足があるって便利なのな。行動範囲の広がりっぷりが凄いっつーか。RPGで空飛べるアイテム手に入れた時の感覚に似てる。

…今なら何処にでも行ける気がした。行き先は無いけど。

「暫く休んだら、また適当に走ってみましょうか」

「ん」

「このまま走り続けたら、世界一周出来るかもですわ!」

「はは…それは流石に、海あるから無理やろ。沈むわ」

「水陸両用車をお入手しなければ!」

「途中でガソリン無くなって漂流するに一票」

「もー!夢がないですわよー!」

オレ達は笑い合う。

チビ先輩がろくでもない奴なのは十分に分かってるけど、離れようとは思わない。運転始めて間も無い人間に高速道路走らせんのまじでヤベーけど、当たり前の顔して人殺した人間だから大して驚きはしなかった。いくら友達の為とはいえあそこまでやる?普通。

…いや、オレが言えた事じゃないか。

「はー、それにしても風がお強いですわー。おハッスルしてますわー」

フードを潮風にたなびかせながら、手すりを掴んだチビ先輩がそう言う。

「飛ばされんなよ」

「うふふ!神々廻サンてば大袈裟ですわねー!」

オレは笑っているチビ先輩の頭をやんわりと上から押した。飛ばされるなんて有り得んと思うけど念の為。するとチビ先輩は、照れ臭そうに口を閉じた。

コイツ、目離してる間にふらっと何処か行ってしまいそうな気がするんだよな。神々廻サンと離れる気なんかないですわー!って今は言ってるけど…たまに怖くなる。目が覚めて姿を確認出来た時、毎回ホッとしてしまう。

変わらない明日を迎えられる保証なんて、何処にもないから。

「何だか体が冷えてきましたわ!ワタクシ先に戻っていますので、神々廻サンはごゆっくり!」

「…オレも行く」

「あらま!」

「嬉しそうにすんなし」

「だってぇ〜!捨てられた子犬みたいな目で見て来るんですもの!可愛いですわねおほほほ!」

「ばーか」

…ああ、そうだよ。

オレはいつしか、コイツに置いていかれたくないと思う様になっていた。


後部座席に乗り込みぐでんと横になったチビ先輩は、うっとりと目を細めて言う。

「はーお車やっぱり暖かいですわ!」

「これから夏になるから、もっと暖まれるぞ」

「お限度超えてますわ!?お蒸し風呂不可避ですわ!?」

「冬の寒さ思い出して乗り切れ」

「そんな無茶苦茶なー!」

ぎゃんぎゃん楽しそうに騒ぐチビ先輩を見て、思わず口元が緩む。年上の大人の筈なのに全然そう思えない。不思議な感覚だった。

「…と、ところで神々廻サン!ワタクシ、やっぱり寒いかもですわ!おハグで温めてくださいまし!」

前言撤回。下心丸出しの醜い大人である。油断ならん。

「はい毛布」

「えーんえーん!イケズー!」

「未成年に手出そうとすんな」

「いつもそう言いますけれどね!?その逆は許されると思いません!?うふふん、いつでも手出してくれて良いですからねっ!ワタクシ神々廻サンなら特別にウェルカムですのでー!」

アホか。ウインクすな。


暫くして、晩飯を食べる為にオレ達はフードコートに入った。

「神々廻サン、何にしますか?」

「オマエと同じでいい」

「分かりました!」

頷いたチビ先輩は食券機へやたら丁重に大事そうに金を入れて、小さいうどんのボタンを二回押した。
…大丈夫なんかな。この生活を始めてからはずっとこんな調子で、一番安い物を選んで済ませている。オレは図体の割に少食だからこれでいいけど。

胃袋のサイズの問題じゃない。生命維持が出来るギリギリの…死なないラインを満たす程度の物しか、気持ち的な問題で食べられないんだよな。コイツは特に言及して来ないから、一緒に居て気が楽。


テーブルに向かい合って座る。チビ先輩はいつも通り、ありがとうございます。頂きます。と合掌してからうどんを食べ始めた。

「…頂きます」

オレも合掌して、続けてうどんを啜る。量が少ないのとチビ先輩の食べる速度の問題とですぐに食べ終わったから、一口一口噛み締める様にゆっくり咀嚼している様子をぼんやり眺める。

「…あ、あのー、神々廻サン」

チビ先輩は、食事の手を止めてオレをおずおずと見上げた。

「そんなに見られると…ワタクシはずかちいというか…」

「駄目?」

「だ、だっ、駄目って訳ではないんですが!むしろワタクシだけ見て〜っていつも思っておりますが!ちょっとあのー…そのー…」

「じゃ、スマホ弄ります。無料WiFiあるし」

「えひーん!やだやだですわー!」

「どうしろと」

「えっとえっと、ガン見せずに見守っててくださいっ!」

チビ先輩はそう言うと、頬を染めて食事を再開した。オレは言われた通り、ぼーっと遠くを見つつ時折チラ見する。目が合う度にチビ先輩は嬉しそうに微笑んだ。

こんな風に日常的に誰かと食事を共にする日が来るなんて、考えた事なかった。もう一生そんな日は来ないだろうって諦めてたから。

人生、何が起きるか分からんものだ。


食事を終えたオレ達は、車内に引き返す前にコインシャワーに向かう。外で寝泊まりしてた頃は大して気にならなかったけど、車内だと空気が篭ってどうしても匂いが鼻につく。ゆっくり眠る為にもちゃんと洗うべきと双方意見が合致した。

とはいえチビ先輩は睡眠の頻度が高くない。三日に一度気絶する様に眠る。嫌な夢を見るからあまり眠りたくないらしい。まあ寝る寝ないは自由だけど、寝てる間に何かされないかだけがオレは怖い。今の所は何も無いけど。

コインランドリーもあるから滞在するには最適な場所だった。長期間居座ると怪しまれるだろうし、いずれ離れないといけないのが惜しい。


諸々済ませて、湯冷めしない為にもさっさと車に戻る。

背もたれを倒してある後部座席はスペースが広くて居心地が良い。寝る時にも便利だし、ワゴン車が手に入ったのは運が良かった。

足を伸ばして目を閉じてくつろいでると、戻って来たチビ先輩に声を掛けられた。

「そういえば神々廻サンは、いつも何を聞いていらっしゃるの?」

…ああ。ヘッドホンが気になるんか。まあ、四六時中付けてればそう思っても仕方ない。

「無音」

一言で答えると、チビ先輩は何故か目を輝かせた。

「か、かっこいいですわー!」

何でだよ。

…そう。オレは別に音楽を聴いている訳ではない。スマホにコードを繋げてるのは、付けといた方が邪魔にならないから。なんでわざわざそんな事してまでヘッドホンを手放さないのかというと…ストレスで聴覚過敏になったせいだ。普通にしてたらうるさくて敵わんから、耳栓代わりにヘッドホンを付けるようになった。不審に思われないし良い具合に音が遮断されるし、人に声を掛けられにくくなるし…格段と過ごしやすくなる。だからオレにとっての必需品。

「無音聴いてるオレ…かっけー…みたいなやつですか?」

「ちげーわ」

「なーんだー若い子特有のオシャレなのかと思いましたのにー」

「…はあ。ま、そういう事にしとけよ」

「雑にあしらわれましたわー!?!?」

ヘッドホンを付けていてもコイツの声はよく届くし凄く聞こえやすい。正直若干うるさいんだけど…不思議と不快では無かった。

車内広いのにわざわざオレの隣…というか真隣…に座っているチビ先輩がぽすっと頭を預けてくる。いつも被ってるフードは今被っていない。何となく自分の頭を乗っけてみたら、風呂上がりだからか良い匂いがした。

「か、嗅いでます?もしかして神々廻サン嗅いでます?」

「…んー」

「絶対に嗅いでますわーーーー!!!」

「ちょっと静かにして」

「ひ、ひええ……ワタクシ、ぽっ…」

落ち着く。眠くなってきた。

「大丈夫かしら…いえいえ念入りに洗ったので大丈夫な筈…おドキドキ…」

なんかぶつくさ言ってるのが聞こえるけど…オレは目を瞑って、意識を手放した。




【Chapter.10】

ぼんやりとしたまどろみの中、瞼を薄く開ける。いつの間にか横になっていた。体には毛布が掛けられている。それからチビ先輩が膝枕してくれてて…頭を撫でてくれてるのが分かった。

遠い昔を思い出して…懐かしくなる。押し寄せた眠気に流され、オレは再び瞼を閉じた。



「母ちゃん」

少年の声に、化粧の最中だった母親は振り返ります。

「どうしたの、ナギ」

「全然眠くない!」

「あらまあ」

枕を抱いて訴える息子の頭を撫で、ふっと笑った母親は、小さな手を引いて布団へ向かいます。横になるよう促して、体に毛布を掛けて…その隣に寝転び母親は少年を寝かしつけます。心臓の鼓動と同じリズムで毛布をぽんぽんと優しく撫でると…次第に少年は、穏やかな寝息を立て始めました。

少年が眠ったのを確認し、母親は化粧を済ませ暗い玄関へ向かいます。そして静かに静かに扉を閉めて、仕事へ向かいました。


少年は母親と二人暮らしをしていました。父親は遊び人のギャンブラーで、少年が物心着く前に家を出て行きました。祖父母は既に他界していて頼れる先がなかった母親は、仕事を掛け持ちして朝から晩まで働いていました。

全ては、息子を幸せにする為でした。

好きなだけご飯を食べさせてあげたい。服もおもちゃも何でも買ってあげたい。大学卒業までの学費を稼いであげたい。一緒に居てあげられる時間は少なくなってしまうけれど、ちゃんと家事もこなして母親らしい事をしてあげたい。片親だからと惨めな思いをさせないように。将来苦労する事がないように。

ですが少年が高校生になった頃。母親は無理が祟り体調を崩してしまいました。せっかく息子の為にと貯めたお金が自分の治療費で消えていってしまう事に、母親は自己嫌悪しました。少年はそんな母親を献身的に支えました。料理も洗濯も掃除も頑張りました。バイトも始めて、経済的にも少しでも支えられるよう努めました。

けれど…やがて、母親は「死にたい」が口癖になりました。


ある日。少年が帰宅すると母親は椅子の上に立っていて、天井に吊るされた縄に手をかけていました。

「何してんの、母ちゃん」

「…ごめんね、ナギ。弱いお母さんでごめんね」

母親は泣いていました。

「怖いの。死にたいのに、怖くて死ねないの。貴方を残して死ぬのも、命を手放すのも、怖いの」

足は微かに震えていました。

「だけどお母さん、もう疲れちゃった」

縋る様な瞳が少年を捉えます。

「ナギ、助けて。自由になりたい」


少年は母親に生きていて欲しかった。ただ、一緒に生きたかった。それだけでした。でも母親の望みは…自分とは違っていたのです。

少年は首に縄をかけた母親の懇願を受け入れ、代わりに椅子を蹴り飛ばしました。そして母親の死を見届けた後。急に怖くなって、住んでいたアパートから逃げ出しました。そんな事をすれば真っ先に警察に疑われる。分かっていたけれど足は止まりませんでした。


死んで欲しくなかった母親を自分の手で殺してしまった罪悪感に蝕まれた少年は、いつしか自分も死にたいと思う様になりました。

だけど死ぬ事は怖かったのです。

死にたくても、死ねなかったのです。



「神々廻サン〜起きてくださいまし〜」

アイツの声がして目が覚める。体を起こすと、チビ先輩は笑顔でこう言った。

「ワタクシ、お腹ペコペコペコリンチョですわ!」

「今何時…」

言いながらスマホを見ると、正午一歩手前だった。

「…悪い」

「気にしないでくださいまし!さ、ご飯食べに行きま…」

チビ先輩の声が途切れる。無理もない。だってオレが押し潰しちまったから。

「し、神々廻サン!?真昼間から大胆!!やっとこさその気になってくれましたのね!!ワタクシ大歓喜!!」

「…ちょっと目眩しただけ」

勘違いしているチビ先輩を他所にもそもそと起き上がる。

もっとちゃんと食べないと駄目って事か。このままの食生活を続けてたら多分、オレ死ねるんだろうな。でも…コイツを置いて死ぬ訳には。

…そう思った時、オレは妙に納得した。ストンと腑に落ちた。
母ちゃんが自由になりたがってた理由、分かった気がする。


守りたいものって、枷なんだ。


「あの、神々廻サン。何だか顔色が…」

「…今日は久々にカツ丼食べる」

「ま!うどん飽きちゃいました?ふふふ、ワタクシもそうします!久し振りに奮発しちゃいますわ!」

奮発って事は…節約してたんか。まあそうだよな。資金には限りがある。オレには母ちゃんが持たせてくれてた通帳があるけど…このままなら貯金はいつか底を尽きる。

…なあ、チビ先輩。オレ達あとどれくらい、こうやって生きていけるんかな。


食事を終え、生き延びてしまったと思いながらオレは手すりに寄り掛かる。目の前に広がる海は…まるで吸い込まれそうなくらいに壮大だった。

「美味でしたわね!」

「…うん」

「お肉最強ですわ!」

「…うん」

隣で楽しそうに話し掛けて来ていたチビ先輩は、オレの気の無い返事に首を傾げる。

「神々廻サン、どうしましたの?お腹ピーピーですの?おトイレ連れてってあげましょうか?」

「…いい」

「えっとえっと〜…ど、どうすれば元気になってくれますか?」

「死にたい」

思わずぽつりと呟いて、続ける。

「…ってオレが言ったら、オマエはどうする?」

左右で色の違う瞳を見つめると、チビ先輩は困った様な顔で俯いた。次第に肩を震わせて泣き始める。

最低な事を言ったのを自覚して。あの日の母ちゃんと同じだという事に気付いて。とっくにオレは限界だったのかもしれないと悟る。

「ごめん」

謝るしか、なかった。


車に戻って、いつもの様に後部座席に座る。チビ先輩はオレの腕にしがみついて離れようとしない。

怖いよな。いつ死ぬか分からん人間なんて。


沈黙を続けている内に夜を迎えた。チビ先輩が口を開く。

「…神々廻サン。ワタクシ、考えてました。ずっと」

「うん」

「ワタクシの取り柄は、殺人だけです。それだけが、ワタクシの出来る事です」

「うん」

「でも……でも、どうしても。神々廻サンだけは…殺せません。殺したくありません。例えアナタがワタクシに殺して欲しいと願っていたとしても」

腕に込められた力が、強くなる。


「だって、もっとアナタと一緒に生きたい」


「…そっか」

オレの瞳から涙が零れ落ちた。いつぶりだろうか。もう思い出せないくらい長い間、泣いてなかった気がする。

あの時、オレも母ちゃんにそう言えていたら…何か変わってたのかな。オレが今、死にたくないって思えたように。母ちゃんも考えを改めてくれたのかな。
生きるのが辛いなら、楽になって欲しいと思ってしまった。でも本当は傍に居て欲しかった。なんでオレは背中を押しちまったんだろう。

…ああ、もう遅い。何もかも。

チビ先輩の腕の中で、オレは声を上げて泣いた。小さい子どもが母親に泣きつくみたいに。ただただ泣き続けた。チビ先輩は自分も泣きながら、オレが泣き止むまでずっと抱き締めて頭を撫でてくれた。

母ちゃんみたいに、温かかった。




【Chapter.11】

お互い泣き止んで、暫くした後。

月明かりに照らされた車内で、ワタクシは神々廻サンの身に何があったのかを教えて貰いました。話してくれた事をお脳内にしっかりとおメモしていたら、神々廻サンはぽつりとこう言いました。

「殺人しか取り柄ないなんて、もう言うなよ」

ワタクシは驚いて、俯いていたお顔を上げます。神々廻サンは優しいおめめでワタクシを見つめていました。


「オマエは、あの友達やオレを、そんな事しなくたって…幸せにしたんだから」


その言葉はまるで、ワタクシの胸の中心で凝り固まっていた何かをぶち壊してくれたようでした。お母サマに無能無能と言われ続けたワタクシにとって衝撃的なものでした。

「ありがとうございます」

何度も噛み締めます。忘れてなるものかと魂に刻み付けます。

「本当に、本当に…嬉しいですわ」

心の底からそう伝えたら、今度は神々廻サンが抱き締めてくださりました。

ああ、なんて愛おしい。いっそこのまま時が止まればいいのに。無理だと分かっていても、そう思ってしまいます。

でも…名残惜しくもワタクシは…いいえ、ぼくは。時間を進めます。

「神々廻さん。お願いがあるんです。どうか…ぼくの話を聞いて欲しい」

誰にも言わなかった秘密。神々廻さんなら受け止めてくれる気がした。彼が頷いてくれたのを確認して、ぼくは語り始めます。


…ぼくは、お母さまから虐待を受けていました。

ワタクシだとか、ですわだとか、そんな風に話す様になったのはお母さまの教育によるものです。そうしなければ暗い部屋に閉じ込められました。はたかれました。ご飯を食べさせて貰えませんでした。

お母さまが出生届を出さなかったので、ぼくは戸籍がありませんでした。存在しない子と同義でした。学校に通わせたりしたら虐待がバレるからでしょう。

お母さまは子どもが出来ない人だと言われていたのに、運良くぼくを身篭れた事で喜んでいました。でもお母さまが欲しかったのは可愛い女の子でした。だからお腹の中の子が男だと判明した瞬間から、自分の望む女の子に…お姫さまに作り変えようと計画を立てたのでしょう。お父さまはぼくが産まれる前に事故で亡くなっていました。だから、助けてくれる人は居ませんでした。

ぼくは家に閉じ込められ、外に出る事も許されず、お姫さまになるべく暮らしていました。お母さまがどうしてそこまで拘っていたのかはぼくには分かりません。きっと、聞いても分からないと思うけど。

ぼくは、そんなお母さまの期待に応えられませんでした。不出来だったから。勉強もピアノもダンスも…何をやっても、上手くいきませんでした。お母さまはそんなぼくを顔しか取り柄のない無能と罵る一方で、お姫さまにする事を一向に諦めませんでした。

ぼくは…自由になりたかった。この檻から逃げ出したかった。お母さまの支配から抜け出したかった。だから…お母さまを、殺しました。その時に気付きました。ぼくは顔しか取り柄のない無能だけど、人を殺す事なら出来るんだって。

その日を境に外の世界へ飛び出したぼくは、お母さまが付けたろくでもない名前を捨てて、自由になりました。一人称や口調も元のものにしたかったけど、この道化の様な振る舞いは人と仲良くなる時に役に立つと気付いたのでそのままにしました。

色んな場所を巡りました。沢山の出会いと別れがありました。手探りだったし大変な事もあったけど、あの頃とは比べ物にならないくらいに楽しい日々でした。

そしてぼくはいつしか、優しくしてくれた人へのお礼に殺人を肩代わりするようになりました。ぼくに出来る事はそれしかないし、何のお返しもせずに生きるなんて嫌だったから。


「…そんな中、あなたに出会ったんです」

話し終えたぼくを一層抱き締め、神々廻さんは言いました。

「ありがとう」

涙声でこう続けられます。


「生きる事を、諦めないでくれて……ありがとう」


ぼくは瞼を閉じました。涙が流れるのが分かりました。互いの心臓の鼓動を感じながら、ふと思いました。


ぼくは、この人と出会う為に産まれてきたんだ。


…話したい事は全部話し終えた。だけどまだ…見せていないものがある。ぼくが男とも女とも言えない存在に成れ果てた、その証明。

「神々廻さん」

「どうした」

「これ…いつも言ってるセクハラとかじゃなくて…真面目に受け止めて欲しいんですけど」

「おう」

「ぼくの下半身、見て貰って良いですか」

我ながら未成年になんて事を言ってるんだろう。完全に変質者だ。誰かぼくを捕まえてくれ。

内心焦っていたけど…杞憂だった。これまでの話を聞いてぼくの意図を察してくれたらしい神々廻さんは、真剣そうに頷いてくれたから。

「…ありがとうございます」

ぼくはお礼を言って、パンツに手をかけた。

でも、おかしいな…手が、これ以上動いてくれない。他人に見られるの平気だった筈なのに…何でかな…神々廻さんの事、信じてるんだけどな。ちょっと怖いや。どうしよう。幻滅されるんじゃないだろうか。気持ち悪いって思われちゃうよな。当たり前だよな。誰が見たってそう思うに決まってる。素人がやった縫合の痕なんて余りにも見苦しい。ほんと、ぼくよく死ななかったな。生命力も取り柄だったのかも。はは。

「え」

神々廻さんがぼくの手に自分の手を添える。そしてぼくの耳元でこう言った。


「見せて」


その声が何だか妙に色っぽくて、ぼくは顔から火が噴き出そうになった。というか出た。見えない炎が。

「は、はい」

としか言えなかった。ぼくの惚れた王子さまはどうしてこうもかっこいいんだ。


神々廻さんは、ぼくの下半身をじっと見つめる。

や、やばい。死ぬ程恥ずかしい。ワタクシモードのテンションだったらどうなっていた事か。

「…痛いんか?」

神々廻さんは心配そうにそう尋ねてきた。

や、優し過ぎる…。おい今までぼくの股間をボロクソに言ってきた野郎共。見習え。この尊いお方を。

「いえ、もう全然…」

「そっか」

ホッとした様に微笑んで神々廻さんは言う。

「なら、良い」

あのさあ。まじで一生ついて行きたい。一生幸せにしたい。末永くよろしくしたい。

あーーーーーーーーーーーーー…好き。


お披露目も無事に終わり、ぼくは神々廻さんに尋ねる。

「神々廻さん…あの。これからは、ワタクシかぼく、どっちが良いですか。ワタクシはめっちゃテンション高くてぼくはめっちゃテンション低いんですけど…両極端で大変申し訳ないんですが…」

「オマエはオマエだろ。ご自由にどーぞ」

神々廻さんは悩む素振りもなく、何でもないようにそう言った。それが凄く嬉しかった。ワタクシとして生きた時間もぼくとして生きた時間も、全部引っ括めての自分だから。認めて貰えた気がして。

「じゃあ…気分で変えますね」

「おう」

…すぅーーーーーーーーー。息を吸って、こほんと咳払いを一つ。

………。

「今は、ワタクシで行きますわーー!!!」

ワタクシ、神々廻サンにお大好きホールドいたします!!!我慢してた気持ちをドッカンドッカン打ち上げますわーーーーーーー!!!

「好きーーーー!!!神々廻サン、大好きーーーー!!!」

「オレも好き」

「ゴッフ!?!?!?」

待ってその反応はワタクシ完全に想定外でした!!無理!!しんどい!!愛してる!!

「神々廻サン!!」

「はい」

「結婚してください!!!」

「調子に乗るなし」

くっそーーーー今ならいけると思ったのに!!!っていうかワタクシ戸籍無いから結婚出来なくないですか!?チ、チキショーーーーーー!!!

「まあ結婚は置いといて、一緒に居て欲しいとは思っとる」

「それ即ち結婚に等しいのでは」

「…解釈は好きにして」

つ、罪な子!!!好きーーーーーー!!!ほんっっっっっっっと好きーーーーーー!!!

「ち、誓いのおキッスしてください!!」

「えー…」

「照れなくて良いんですよ!!さあ!!さあさあ!!」

押せ押せ押せ押せー!!神々廻サンは押しに弱い!!神々廻サンは押しに弱い!!

「……目閉じろ」

キターーーーーーーーーーーーー!!!

「はい!!」

ワタクシ、お瞼おシャッターガラガラピッシャーン!!!

………あら?

「はい。やったぞ」

「待って待って待ってお口じゃなくてお鼻でしたわよ!?!?座標が!!座標が!!」

「意味知らんの?」

「え、意味?」

「やーい」

「んななななー!?」

か、可愛い!!からかわれました!!

「これで調べろ。……おやすみ。また明日」

そう言うと神々廻サンはおスマホをワタクシに渡して、ごろんと横になってしまいました。

「お、おやすみなさーい!また明日ですわ!」

検索する指がちょっと震えちゃいます。んひひひ。えーっと、キス…鼻…意味…っと。
はい!出ました!


『恋人やパートナーを自分の傍に置いて、大切にしたいと思っている』


「ぽ」

ワタクシ。まだ起きているであろう神々廻サンにぴっとりくっ付いて。安らかに死亡。




【Chapter.12】

「おはようございますですわー!!」

「ん…朝から元気過ぎん…?」

えっへっへー…ワタクシ、あの後爆睡したんですが…なんと!

「初めて悪夢見なかったんですの!!スッキリ快眠ですわー!!」

眠たそうにしていた神々廻サンは、ワタクシの言葉を聞いて嬉しそうに瞳を細め…頭を撫でてくださりました。

「めっちゃ泣いたから、夢見てる場合じゃ無かったんかもな」

多分、それもありますわね!でもきっと…。

「神々廻サンが全部受け止めてくれて、安心したからかもしれませんわ」

「…ふーん。だと、嬉しいけど」

あらぁん珍しく素直!?今日もハイパー可愛いですわー!!日々可愛いを更新してますわー!!

悶えるワタクシの隣で小さく欠伸をした後、こしこしと目を擦りながら神々廻サンは提案してきました。

「…朝飯食うか」

「いえーい!賛成ですわ!」


まあまあまあ…どうしたものでしょう。

「神々廻サン」

「何」

「そ、そんなに食べるんですか?」

「そうだけど」

少食だった筈の神々廻サンが…まさかまさかのお定食(ご飯大盛り)を朝から食べようとしていますわー!?!?

「急に大量に食べて大丈夫なんですか!?」

「大丈夫なんじゃね。昔を思うとこれでも少ないくらいだぞ」

「わーぉ」

まあ確かに凄い食べてたらしいですからね。納得。そうじゃないとこんなに身長伸びる訳ありませんわ。神々廻サンのお母サマ、子どもがスクスク成長出来る様に頑張っていらしたのですわね…。それに比べてワタクシのお母サマってば本当に!!お陰様でワタクシチビチビのチビ助ですわ!!小柄で助かった事が多いので結果オーライですけれど!!

ひょいぱくひょいぱくとまるでおマシーンの如く食べ続ける神々廻サンに思わず圧倒されていましたら、彼は言いました。

「しっかり食べて栄養摂らないとな」

「ふふ!そうですわね!ワタクシもいっぱい食べますわー!」

「おー、そうしろそうしろ」

お味噌汁をズズっと啜った神々廻サンは、ぼそりと付け加えます。

「死んだら許さん」

…んふ!もー、神々廻サンを置いて死ぬ訳!

「心配しなくても、ワタクシは生存する為のおポテンシャル高いですわよ!」

「流石先輩」

どやぁ…。

二人でもりもり食べて一緒にご飯をおかわりしに行くと、おフードコートのオバチャマがまだまだいっぱいあるからねー!と嬉しそうに笑い掛けてくれました。沢山食べる若者がお好きみたいです。お気持ち分かりますわ〜見てて楽しいですもんね!


さーてさてさて。腹ごしらえも済んだ事ですし!

「そろそろ、出発いたしましょうか!」

うさぎのおキーホルダーの付いたお車のお鍵を手に、神々廻サンが微笑みます。

「へいへい。行き先はどちらまで?」

「世界の果てを見に行きましょう!!」

「何処だよ、それ」

ふは、と神々廻サンが笑います。ワタクシも笑い返します。

神々廻サンと行くなら、目的地なんてなーんでも良いんです!ワタクシは!


さあ、お車発進!出発進行ー!ワタクシ達の旅はこれからですわー!!




【Epilogue】

988 名無しさん
女神様覚えてる奴いる?

989 名無しさん
>>988
急に音沙汰無くなったよな

990 名無しさん
寂しい

991 名無しさん
彼氏でも出来たんやろ

992 名無しさん
>>991
やめて泣いちゃう

993 名無しさん
>>992
ガチ恋勢涙拭けよ

994 名無しさん
ここのスレの奴らほんと女神様好きだよな
俺もだけど

995 名無しさん
元気に過ごしてるならそれでいいよ

996 名無しさん
だな

997 名無しさん
大分前スレに書き込んだ居残り説教受けてたサビ残社畜だけど今日辞表叩きつけてきたわ
暫くニートを謳歌する

998 名無しさん
>>997
おーお前か
おめ

999 名無しさん
>>997
やるやん
俺もそうすっかなー

1000 名無しさん
皆頑張ってんだな
強く生きような

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