Episode.3-3 Maze Haze Salvation

【Prologue】

霧に包まれた常闇の世界。
ぼんやりとした月明かりが男を照らす。

足元には無数の屍。
野外にも関わらず辺りには鉄の匂いが充満していた。

色白な頬に紅を散らせた男は、微かな声量で呟く。

「…早く、探さなくては」




【Chapter.1】

「っぱ可愛いのだ〜…」

天霞姫神ちゃん最強過ぎる〜!推せる〜!

天霞神話伝ってかなーーーーーり前に出たゲームらしいけど、むぁ〜じ神ゲー!何周しても飽きないのだ!人間すげーのだ!こんな良いもの作って誰かを幸せに出来ちゃうなんて誇るべきなのだ!うおー!!誇れー!!

「ごしゅじんさま。ごはん、できた」

…っとと!良い匂いすると思ったら!

「ありがとな、ヒイラギ!」

ヒイラギは、ミラの大事な使い魔なのだ。わんこみたいな見た目の悪魔なんだけど、なんと!人型に変身する事が出来ちゃうのだ!そんでミラのお世話してくれてるのだ!つまりめちゃめちゃ良い子なのだよ!

「よしよし〜!」

頭なでなでしたら、もふもふの尻尾ふりふりしたのだ。ヒイラギまだお耳と尻尾仕舞えないのだ。そこがまた可愛いのだ。へへ!



「さて!ほいじゃあ、ミラはバイト行ってくるからな!留守番任せたぞ!」

「う。がんばる」

両手ぶんぶん振って見送ってくれたヒイラギに、ミラはにっこにこで手を振り返した。ヒイラギが待っててくれると思うと、頑張るぞーの気持ちがむくむく湧いて来るのだよ!

よーし、レッツゴー!



「いらっしゃいませー!ご注文お決まりでしょーかー!」

ミラ専用の踏み台に乗って、明るく元気に笑顔でバイトするのだよ!ミラ背小さくてカウンターに埋もれちゃうから、てんちょーが踏み台用意してくれたのだ!やさしーのだ!

「はい!!ワタクシは、おチーズバーガーのおセットでお願いいたしますわ!!おサイドメニューはおポテトのLサイズ、飲み物はおコーラで!!」

「かしこまりましたー!!」

レジぽちぽち!チーズバーガーのセット!ポテトLサイズに変更!飲み物はコーラ!

「ナギと天霧サンはどうします?」

「んーそうだなー…僕、ハンバーガーのセットで、サイドメニューサラダにしてください。ドレッシングはオニオンで。あと、飲み物烏龍茶で」

ハンバーガーのセット!サラダ!オニドレ!烏龍茶!ぽちぽち!

「おサラダァ!?!?しかもお飲み物おヘルシー!!正気ですか天霧サン!!そんなんじゃ大きくなれませんわよ!?!?」

「この歳になってデカくなるのは縦じゃなくて横なんだよ先輩」

「店員サン!この子の注文、おビックなおハンバーガーのセットでおポテトLサイズ飲み物おコーラに変更して頂けませんか?あとおナゲットとアップルパイも追加で!」

「っざけんな待てゴルァ。あ、すいません。変更も追加もしなくて大丈夫ですんで…」

ほよー。元気なおねーさん、おにーさんにずるずる引きずられて行っちゃったのだー。

ついついぽかーんとしてたら、メニュー表じーっと見てたもう一人のおにーさんがすいーっと指を動かしたのだ。

「オレ、こっからここまで単品で」

肉系ハンバーガーフルコンプ…だと…!?


それから時計の針がぐるぐる回って〜…!


…ふぃ〜!よく働いたのだ〜!もうお外真っ暗なのだ!

「お疲れ〜ミラちゃん!」

わ!先輩が声を掛けてくれたのだ!先輩はミラにお仕事教えてくれた恩人さんなのだ!

「お疲れさまです!」

「今日も頑張ってたね!最近ミラちゃんみたいな外国人のバイトさん色んな店で増えてるけど、ほんと凄いと思うわ。違う国で働くのって不安じゃない?尊敬する〜」

「えへへ!皆優しいから、楽しいです!」

「も〜!可愛い〜!困った事あったら言ってね?変なお客さん来たらすぐに言うんだよ?」

「ありがとうございますっ!」

先輩やさしーのだ!先輩だけじゃなくて、お店の皆ミラに優しくしてくれるのだ!人間大好きなのだ!幸せなのだよ〜!



「ヒイラギ〜!ただいま〜!」

ドア開けたら、すぐにヒイラギが走って来てくれた!
ミラはダイブして来たヒイラギをキャッチして、ぎゅーって抱き締める!

「おかえり、なさい」

ふふふ!尻尾くるくる回転してるのだ!ヒイラギあんまり表情変わんないけど、とっても分かりやすいのだよ〜。

「お留守番ありがと!」

ミラの腕の中でくーんくーんって鼻鳴らしてるのだ〜ヒイラギ可愛いのだ〜癒されるのだ〜…。



さあ!ご飯食べてお風呂入って寝支度済ませて、取り出したるは〜……小説なのだよ!

ミラ、ゲームも漫画もアニメも小説もだーいすき!好きなものいっぱいだと毎日忙しくて時間足りんのだ!

「ヒイラギも一緒に読むかー?」

「よむー」

「よっしゃ!」

破竹せんせーの小説、ミラ好みのほんわかあったけーお話なのだよ。幸せふわふわ気分になるのだ。もっと人間好きになっちゃうのだ。めののんせんせーが漫画にしたやつも読んでるけど、さいきょー!って感じ!


ゲームのサウンドトラックを流しつつ、本を読み読みしてたら…。

「…あっ!もう寝る時間なのだ!」

んも〜早いのだ〜!ヒイラギいつの間にか寝ちゃってるし!ミラにぴっとりくっついてすやすやしてて可愛いのだ。もちもちほっぺがふにょんって潰れちゃってるのだ。

んしょんしょとお布団にヒイラギを運んでから、紐を引っ張って電気を消す。ヒイラギの隣にころんと寝転んで、あったかい毛布かけて…ミラは目を閉じる。

「おやすみなのだよ、ヒイラギ…」

むにゃむにゃ。今日も楽しい一日だったのだ…。



…かーらーのー!翌日!

今日はバイトお休みの日なのだ!しかもお天気良いのだ!

という事で〜…。

「ヒイラギ!お散歩に行くぞー!」

「おさんぽっ」


変身解除してわんこみたいになったヒイラギを抱っこして、ミラは遊歩道をてくてく歩く。ヒイラギは怖がりさんだから、ミラと一緒じゃないとお外出られないのだ。
安心するのだ、ヒイラギ!ミラが絶対守るのだよ!

「風が気持ち良いな〜」

「きもちー」

「小川がキラキラしてるぞ〜」

「きらきらー」

「きれーなお花も咲いてるぞ〜」

「おはなー」

ふは〜…ヒイラギとまったりお散歩するの、幸せなのだよ〜…。

「…ん?」

遊歩道の近くにミラお気に入りの本屋さんがあるんだけど、店長のおばーちゃんが入り口にポスター貼ってるのだ。なんだろなんだろ?気になる〜。

「おや!ミラちゃんおはよう。ヒイラギくんとお散歩かい?」

「おばーちゃん、おはよー!うん、お散歩中なのだ!ねーねーそのポスター…」


んなー!?!?ななな…なんだってー!?


「えええええー!!ヒイラギ、凄いぞ!破竹せんせーとめののんせんせーのサイン会だって!!本にお名前書いて貰えるのだよ!!」

いいなー!いいなー!サイン欲しいのだー!家宝にしたいのだー!うわー!いいなー!

「おばーちゃん!破竹せんせーとめののんせんせー、此処でサイン会するの!?」

「ああ、そうとも。破竹くんは、小さな頃からうちの店に来てくれていてねぇ…礼儀正しくて、本当に良い子なんだよ」

「そうなんだぁ!めののんせんせーは?」

「ふふ。梅乃ちゃんは、とっても元気な明るい子さ」

「わー!会いたーい!ミラ、会いたいのだよー!」

心がぴょんぴょこしちゃうのだ!体もぴょんぴょこぴょんなのだ!

「一週間後に整理券配るから、是非おいで」

「うん!分かった!」

丁度その日はバイトお休みなのだ!ラッキーなのだ!えへへ!楽しみ!


それからてくてくお散歩してたら……はっ!この匂いは!

ラーメン屋さんなのだ〜!!

いっぱい歩いてお腹空いたし入るのだ!

「ヒイラギ!変身!」

頷いたヒイラギは、ぽむっと人型に早変わり!もふもふのお耳はミラが被ってた麦わら帽子で隠して〜…OK!入店だー!


やっぱりラーメン屋さんはいつ来ても活気があって、居るだけで楽しいなぁ!

そんでもってチャーシューメンの食券無事2枚ゲットなのだ!カウンターに着席ぃ!

「ミラちゃんとヒイラギくん!いらっしゃい!」

「こんにちはなのだー!」

「ちはー」

「今日もあれいっとくかい?」

「ニンニクマシマシー!!!」

「にんにくましましー」

「あいよ!!」


うまーーーー!!!分厚いチャーシュー!!!たっぷりのニンニク!!!堪らんのだーーーー!!!飛ぶぞ!!!
勿論麺も美味しいのだよ!ずるずる!ずるずる!スープも飲み干しちゃうのだ!ごくごく!ごくごく!

「ぷひゃー!幸せだなぁ、ヒイラギ!」

「うまうまー」



…けぷー。満足したのだー。もう今日は何も食べなくても平気なのだー。心身満たされたー。

とりあえず、ヒイラギがうつらうつらしちゃってるから一旦おうちに帰るのだ!お昼寝タイム大事だからな!

「ねむねむ…」

「お腹いっぱいになると眠たくなるよな〜」 

変身解除したヒイラギを抱っこしてなでなでしてたら、一足先に夢の中行っちゃった。ぷぅぷぅ言って寝てるのだ。寝てるともっとぬくぬくな気がするのだ。えへへ。


お布団にヒイラギをねんねさせて、ミラは昨日中断した小説の続きを読み読みする事にしたのだ。
もう何回も読んでるけど、楽しいのだ!

いや〜新刊もサイン会も楽しみ〜!整理券絶対ゲットしたいのだ〜!



それから1時間くらい経って、ヒイラギが目を覚ましたのだ。

「ごしゅじんさま、おはよ」

「起きたかヒイラギ!おはよう!」

「ごはんーごはんー」

ぐっ…!!来ちまったのだ…この時が…!!
ヒイラギは契約者のミラの血を定期的に飲まなきゃなのだ。そして今日がその日なのだ。

ええい、ままよ!!

きゅるんとしたおめめに見つめられながら、ミラはがばーっと腕を差し出す。

「がぶっと行くのだ!がぶっと!」

「がぶー」

いだああああああああああああああーーーーーーーーい!!!!!!!!お注射同時に2本刺されてるみたいなもんなのだーーーーーー!!!!!!!!えーんえーんえーん!!!!!!!!ミラ痛いの嫌なのだよーーーー!!!!!!!!でもこうしないとヒイラギ死んじゃうから我慢我慢我慢!!!!!!!!

「ありがとー」

「いいって事よ!」

腕に赤い点2つ出来ちゃってるのだ。ジンジンするのだ。ひー!いてて!で、でも平気なのだ!ヒイラギが傷口ぺろぺろしてくれたから!痛いのどっか行ったのだ!強がってないのだ!

…ぐすん。

ほ、ほんとにへっちゃらなのだよー!!!




【Interlude.1】

「おい、人間。聞きたい事がある」

声を掛けられた女性は、訝しげに眼前の男を見上げた。

大きな2本の角。
ファンタジーな黒い翼。
仰々しい衣装。


紛れもない不審者だった。


「(え…コスプレ…?ここら辺でイベントあったかな…会場外をコスプレしたまま歩くのはマナー違反って聞いた事あるけど…)」

困惑する様子を気にも留めず、男は画用紙を手渡した。まるで写真の様な精密な似顔絵が描かれている。

白く長い髪。大きなお団子。ぱっちりとした黄緑色の瞳。小学校低学年程に見える小柄な女の子。

「名は、アルケミラ・モリス」

最低限の言葉だが、女性に意図は十分伝わった。この子を探していると言いたいのだろう、と。
そして彼女には心当たりがあった。最近行ったばかりのファストフード店の外国人店員に、瓜二つだったからだ。

「(教えて良いのかな…この人何者…?身内?それとも誘拐目的?ストーカー?)」

思わず後退りした女性は息を飲む。男が、浮世離れした端正な顔に憂いの表情を浮かべたのである。

滲む儚さが彼女を飲み込んだ。疑念も警戒心も、瞬く間に霧散させられてしまった。

思考がゆるんだ女性は…つい、口を開いてしまう。




【Chapter.2】

よーし!バイト頑張るぞー!踏み台乗って、スタンバイなのだ!えいえいおー!

…おっ!早速自動ドアがうぃーんってなったぞ!元気に挨拶するのだよ!

「いらっしゃいま……」


あ。


「むー!!ふごー!!」

ぐああーっ!!叫ぼうとしたら先手で口塞がれたのだ!!先輩ー!!助けてなのだー!!

「はあ…やっと見つけた…元気そうで良かった…。会えて本当に嬉しいよ」

ぬあー!!!やめろーーー!!!抱っこすんな頬擦りすんな離すのだーーー!!!

「ミラちゃん!?た、大変…警察…っ!!」

せ、先輩!!ナイスぅ!!

「エグい程の美形イケメン」

あーっ!?先輩鼻から血ぃ出して倒れちゃったのだー!?!?

「…騒がしいね。場所を変えようか」

ぎええ耳元でぽしょぽしょ喋られるのすんげー嫌なのだよー!!ぞわわわわーってなるー!!だからとりあえず首ブンブンして頷いたのだ!!

放置してごめん先輩ー!!バイトバックれてごめんてんちょー!!



ううう…誰も居ない所に連れて来られたのだ。しかも離してくれないのだ。

「何で来たのだ!ミラは自立したのだ!ほっとけなのだ!」

「自立…?追放したって聞いたけど」

「そ、それは…」

「隠さなくて良いんだよ。全部知ってるから」

「…なら尚更なのだ!ミラに関わるのは駄目なのだ!兄者まで追放されちゃったらどうするのだ!」

むきゅー!?余計に抱き締められたのだー!?

「心配してくれてありがとう。お兄ちゃんは、何があっても味方だよ」

むむむ…優しい声なのだ…あったけーのだ…。
兄者、なんか知らんけど昔からミラにだけ優しいのだよ。なんか知らんけど。

「兄者は、ミラを連れ戻しに来たって事?」

「いやいやまさか」

即答されたのだ。じゃあなんなのだ。わかんないのだ。

「帰る場所なんて、もうないからね」

え?

「だって魔界、お兄ちゃんが滅ぼしたから」

「なんて?」

「だって魔界、お兄ちゃんが滅ぼしたから」

「なんで?」


ほ?


「ミラたんを認めないどころか虐めやがったクソカス塵芥共に存在価値は無いと思って」

しれっと凄い事言ったぞこの悪魔。

「…マジでやったのか?」

「うん」

「キル?」

「勿論」

「父上と母上…」

「問答無用の皆殺しだよ」

ひええーーーーー!!!おっかねーのだーーーー!!!おまわりさーん!!!此処にやべー奴いるのだーーーー!!!


…はあ。


ミラ、実は魔界から来た悪魔なのだ。

でもミラは悪魔向いてなくて、そんで悪魔クビになっちゃって…人間界に追放されたのだ。

…正直、嬉しかったのだ。だってミラ、人間大好きだから。人間が作るものがキラキラして見えたから。

悪魔は人間に酷い事しないといけないのだ。ノルマがあったのだ。人間を傷付けて、不幸にして、沢山泣かせて…そうすればするだけ、魔界では偉いってなったのだ。人間を虐めるのが生き甲斐だって皆笑ってたのだ。楽しそうにしてたのだ。

ミラ、その気持ちがわかんなかった。

学校で人間界の事、人間の事、沢山勉強した。人間って凄いなぁって思った。仲良くなりたいなーって思った。泣いてる顔なんかより、笑顔が見たかった。
だからミラ、人間界に行きなさいって言われた時は困ってた人間を助けてたのだ。そしたら父上と母上に、ミラは悪魔の面汚しだって怒られちゃった。

ご先祖様に顔向け出来ない。
あんたのおかげで私達までご近所さんから笑い者にされてるのよ。
お兄ちゃんはあんなに優秀なのに、どうして期待を裏切る事ばかりするの。
お前はあの子の出涸らし以下の存在だな。
生きていて恥ずかしいと思え。
産まなきゃ良かった。
さっさと消えろ。

…そう、言われたのだ。おうち追い出されちゃったのだ。
二度と帰って来るな、犬の餌にでもなっちまえって。


それでミラ、使い魔のヒイラギと一緒に人間界に来たのだ。

人間は優しくて、あったかくて、ぽかぽかだった。ミラをいっぱい助けてくれた。幸せにしてくれた。おかげでミラ、にこにこで生きてこれたのだよ。


でもって…兄者はエリートなすごすご悪魔なのだ。ミラには優しいけど、人間には優しくないのだ。だからまあ…価値観違うし…離れて暮らす方がお互いの為だと思ってたんだけど…。


「ねえミラたん」


たんて、なんすか。


「兄者…ミラの事そんな風に呼んでなかった筈じゃ…」

「就職して一人暮らし始めてからミラたん欠乏症になって脳内でミラたんと暮らしてたらいつの間にかこうなった。でもやっぱり実物のミラたんが一番だなって実感してる」

「こわ」

知らぬ間にバケモンになってたのだ。いや、片鱗は昔から見えてたけどここまで酷くは無かった記憶があるのだ。真偽は置いといて魔界滅ぼすレベルとかミラどう責任取れば良いのだ。つーかさっきからくんくんくんくん嗅ぐな。

「お兄ちゃん住む場所ないから、ミラたんのお家にお邪魔させて欲しいんだけど」

「身の危険を感じるので丁重にお断りさせてください。無理ですごめんなさい」

「ありがとうミラたん」

「会話してくれ」

…!?い、今なんか地響きみたいな音が…。

「お腹空いた…」

震源地、兄者だったのだ。

「ミラたん探して三千里…飲まず食わずでここまで来たから…」

「はぁあー!?そりゃ腹減って当然なのだ!!死んじゃうのだ!!」

「ミラたんが心配でそれどころじゃなくて…あと人間が作った物口に入れたくなくて…」

「これから人間界で暮らさなきゃなのに変な意地張ってる場合じゃねーのだよ!」

「ミラたんの手料理しか食べたくない」

げえ…追撃みたいにまた地響き起きたのだ…仕方ないのだ…。

「じゃあ、すぐお店戻るのだ。謝罪と報告もしなきゃだし」

「つまりデートって事?」

「救命行為なのだ」

「好意だなんてそんな…ミラたん大胆…お兄ちゃんもめっちゃ好き…」

「ほんとは元気だろ兄者」

「ミラたんのおかげで心は元気100倍」

頭痛くなってきた。



「ほんっっっっっっとうに申し訳ございませんでした…」

「いいよいいよ!鳴戸さん鼻血出して気絶してるし、ミラちゃんは居ないしでびっくりしたけどね。無事で本当に良かったよ」

「でんぢょぉ……」

人情ぉ……。

「ミラちゃんのお兄さんすんごいかっこいいね!?モデルさん!?」

鼻に詰め物した先輩が、向こうでミラが作ったハンバーガーもちゃもちゃ食ってる兄者見てめろりんめろりんしてるのだ。とりまモデルなのは否定しといた。

はぁ…気が重いのだよ…兄者、ツノも翼も尻尾も隠さないせいでめっちゃ目立ってるのだ…ミラはちゃんとお外では隠してんのに…。
幸いな事にお客さんにもお店の人達にもクオリティ高いコスプレしてる外国人って解釈されてるっぽいしウケも良いみたいだけど、人間界に溶け込む気無さ過ぎなのだあの悪魔。浮きまくってんのだ。まあ悪魔だから浮くんだけどな。あはは。

そういえば兄者住む場所無いって言ってたっけ…。お金持ってんのかな。持ってないだろうな。人間界でお仕事した事ないだろうし。

……。


もーーーーーーー!!


「…という事で、ヒイラギ。こちら、ミラの兄者なのだ」

結局ミラの城に連れて来ちまったのだ…。

「アカンサス様と呼べ。駄犬」

「あにじゃ」

「は?一文字しか合ってないぞバカ犬。知恵遅れの低級悪魔らしいな。お前の兄になった記憶など我の中に存在していない」

「がう」

「噛んだ!!こいつ我の手噛んだ!!殺していい!?」

「んな事したら兄者との縁切るのだ」

「嘘嘘嘘嘘ごめんごめんごめんごめん」

やれやれなのだ…。

「真面目な話するけどさ。兄者でっかいし、ミラ達のおうちにずっと居られると困るのだ。お仕事見つけてお金稼いでなるはやで自分のおうち見つけてくれ」

「ニートになれば一生居て良いって事?」

「ヒイラギ。噛んでよし」

「がぶがぶ」

「嘘嘘嘘嘘ごめんごめんごめんごめん」

エリート悪魔って肩書きが音立てて崩れ去ってるのだ。兄者、こんなんだけどちゃんと仕事見つけられるかなぁ…心配でしかないのだよ…。




【Interlude.2】

「じゃ、行ってくるのだ。ヒイラギ、お留守番よろしくなのだよ!」

「う。ごしゅじんさま、がんばって」

「兄者はちゃんと仕事探しに行くんだぞ!」

「はーいミラたん」

ミラがバイトに出掛けた途端、アカンサスの表情から笑みが消える。

「駄犬」

「なに。あにじゃ」

室内用モップを手にロング丈のメイド服を纏う、人型モードのヒイラギが首を傾げる。
最初にミラが紹介した時の呼び方で定着しているのだろう。何度アカンサスが修正を求めても、一向に変わる気配は無かった。

「お前、いつミラたんの使い魔になった」

「いちねんまえ」

「一…年…だと…!?」

アカンサスの瞳が見開かれる。

「そんなに長期間ミラたんと一つ屋根の下暮らしていたと!?」

「う。しりたい?ごしゅじんさまと、ひいらぎのおもいで」

「うるせえー!!知りたくねえー!!自慢話なんて求めてねえんだよこの性悪がァー!!」

アカンサスは泣きながらアパートを飛び出して行く。ヒイラギはぽかんとした様子で大きな背中を見送り、手を振った。

「あにじゃ、いてらー」



…遡る事、約三年前。

ヒイラギは、低級悪魔として魔界に産まれ落ちた。


低級悪魔は、上位の悪魔がビジネス目的に作り出した魔物だ。魔界に住む動物を捕獲し、飼育し、品種改良を繰り返した結果の産物だ。

低級悪魔は、使い魔として使役される事で存在意義を得る。契約者の血を定期的に摂取する事で命を繋ぐ。絶対に主人を裏切る事の無い下僕となる宿命を課された存在…それが低級悪魔だった。

とはいえ、悪魔側に必ずしも使い魔を従えなければいけない義務は無い。人間界で言うペットと同じだ。何体も低級悪魔を従える悪魔もいれば、アカンサスの様にその逆もいる。

悪魔は、本能的に弱者を虐げる生き物だ。罪悪感など微塵も存在しない。善が悪、悪が善。そんな価値観を誰もが持っている。
悪魔の使い魔になるという事が何を意味するのか…もはや、語るまでも無いだろう。


使い魔として買われ、使用人として家事を任される事。それが低級悪魔に唯一残された、比較的穏やかに生き延びる道だった。

故に低級悪魔は、飼育小屋で能力を磨く。自身の価値を高めようと足掻く。
人型になる練習を重ね、それが終われば炊事洗濯掃除…あらゆる家事を身に付けるべく時を費やす。

猶予は三年。
その間に買われなければ無価値な商品として処分されるか、新たな低級悪魔を産む為の存在として生かされた。文字通り、使い物にならなくなるまで。


ヒイラギも例外ではなかった。産まれてすぐ親元から離され、他の低級悪魔と共に飼育されて過ごしていた。

飼育係には低級悪魔を鬱憤晴らしに使う者がいた。時間が経てば治る程度の怪我を負わせて楽しむのである。無抵抗な低級悪魔は格好の餌食だった。

ヒイラギはある日、そんな飼育係達のゲームに使われた。石を投げて一番大きな声で鳴かせたら勝ち、というルールだった。
そして…運悪くぶつかった石は、ヒイラギの左目を潰すに至った。

片目が無い商品は売れない。
飼育係は痛みに呻くヒイラギを早々に切り捨て、飼育小屋の窓から放り出した。


「いたい…。いたい…。だれか、たすけて…」

声は届かない。救いの手を差し伸べる者など、この魔界には存在しない。
弱き者は朽ちゆく。強き者は生き残る。それが条理だ。

…そう。その筈だった。

だが出血により衰弱していたヒイラギを、偶然通り掛かったとある悪魔が抱き上げたのである。

「おい、大丈夫か!?酷い怪我なのだ…!」

霞む視界の中、温もりを感じつつ…ヒイラギは思った。
きっと女神様が、お迎えに来てくれたのだと。

「首輪が無いって事は野良だよな…このままじゃ死んじゃうのだ…」

少女は、自身の親指に牙を立てる。柔肌がぷつりと小さく裂け、じわりと赤色が滲んでいく。痛みに顔を顰めながらも、少女はヒイラギの口元に指を添えた。

「ほら、飲むのだ…!そうすれば契約が成立する!怪我も良くなる筈なのだ!」

「…ぅ」

「頑張れ…!頑張るのだ…!一緒に生きるのだ…!」


それは運命の分かれ道だった。

生か死か。

この二択を前にして、ヒイラギが選んだのは。



「ただいまなのだー!」

ミラが元気に帰宅すると、ヒイラギは作業を中断して一目散に主人の腕の中に飛び込んだ。

「おかえり、ごしゅじんさま」

あくまで悪魔でありながら、悪魔らしかぬ優しい悪魔。こんな主人は何処を探したって見つからない。ヒイラギはそう確信していた。

愛おしそうに首輪を撫で、主人から貰った名前を携え…小さな悪魔は微笑む。

「ひいらぎ、しあわせ」

心の底から、幸せそうに。




【Chapter.3】

晩飯食ってる最中、兄者にしれっと報告されたのだ。

「あ、そうそう。お兄ちゃんバイト先決まったよ。早速明日から勤務」

「はやっ」

はやっ。マジではやっ。はーーーーっや。

「怪しい仕事じゃないよな…?」

「接客業だよ」

「兄者が接客業ぉ!?!?!?絶対無理ゲーなのだ!!やめとけなのだ!!お客さんがかわいそーなのだ!!」

「自然体で良いからって言われたよ」

「兄者の自然体ぃ!?!?!?接客適正マイナス振り切ってるだろ!!意味分からんのだ!!その店ぜってーおかしいのだ!!」

「ミラたんは心配性だなぁ」

頭の中ハテナでいっぱいでプチパニックのミラと違って、兄者は呑気にヘラヘラしてるのだ。不安しかないのだ。

「どんな店か教えるのだ」

「悪魔系コンカフェ」


悪魔系…コンカフェ………………?


はっ…!あぶねあぶね。思わず宇宙猫になっちまったのだ。

「道歩いてたら勧誘されたんだ。貴方以上の逸材は何処を探しても見つかりません是非お願いします神様仏様アカンサス様って土下座されて気分良かった」

なんだこいつ。なんで働かせて頂く立場の癖に土下座されてんだ。

ミラは人間界来て仕事探すのめちゃめちゃ苦労したのに…背ちっちゃいから子どもだと思われちゃって、ごめんねって断られまくったのに…!!いや、17歳だからまだ子どもなのは合ってるんだけどな。実年齢よりかなり下に見られていたのだよ…。
つまり今のお店もといてんちょーとは奇跡の出会いだったのだ。絶対クビになりたくねーのだ。死ぬ気で働かせて頂く所存なのだ。馬車馬志望なのだ。

なのに兄者は…たった半日で仕事を…当たり前の様に見つけて…ぐ、ぐおおおお…!!!良かったなーの気持ちとやるせねーぞの気持ちが同時に存在してるのだ…!!

「お兄ちゃん、ドS担当なんだって」

ああ…道理で自然体でOKな訳なのだ…。

「あと住む場所だけど、ミラたんの隣の部屋借りる事になったから」

「は?人間住んでた筈だが?」

「空き家だったよ」

「空き家じゃなかったよ」

「気のせい気のせい」

んな訳あるか。どんな手段使いやがったのだこの悪魔。

「バイト代日払いにして貰ってるし、なるべく早く此処から出て行ける様に頑張るよ」

「う、うん」

なんか怪しいな…出て行くの渋ってた兄者が積極的に頑張る姿に違和感しかねーのだ…。

「壁に穴開けて部屋合体させようね」

ほれ見たことかーーーーー!!!させるかばかたれーーーーー!!!



えー…それから数日経ったのだ。

ミラ、絶賛人型ヒイラギと一緒にサングラス掛けて尾行中なのだ。誰をって…?兄者に決まってるのだ。ちゃんと仕事出来てるのかチェックしようと思ったのだよ。

兄者、相変わらずツノも翼も何もかもフルオープンで涼しい顔して出歩いてるのだ。メンタル鋼ってもんじゃねーのだ。擦れ違った人間が三度見くらいしてるのだ。見てるこっちがヒヤヒヤする。寿命縮みそう。

「ヒイラギ…あんぱん食うか…?」

「くうー」

「うし…半分こするのだ…」

こそこそ…こそこそ…。もぐもぐ…もぐもぐ…。

あっ!ビルの中に入ってったのだ!あそこが勤務先だな?悪魔系コンカフェらしき看板あるし、間違いねーのだ!

突入!!!



「きゃ〜!!アカンサス様ぁ〜!!本日も麗しい〜!!」

「喚くな愚民。耳が腐る」

「ありがとうございますぅ〜!!」 

兄者、下僕って書いてあるカード首から下げた人間を椅子にしてる。左右からうちわで煽がれてる。飲み物飲ませて貰ってる。


魔王かな?


「チェキお願いします!アカンサス様!」

「フン…くだらん。お前一人で撮っていろ」

「連写してきますぅ!!」

おねーさん。それただの自撮りなのだ。

…な、なんかミラの思う接客業と違い過ぎて脳がバグりそう。コンカフェの存在自体は知ってたけど行った事は無かったし、軽いカルチャーショックなのだ。
まあその…兄者はさておき、お客さんが楽しそうで何よりなのだ…。


カウンターの隅っこでドリンクちびちび飲みながら観察してたら、お客さんの会話が自然と耳に入って来たのだ。

「アカンサス様美し過ぎる。顔面で人殺せる絶対」

「んね!あれですっぴんって人間辞めてますわ」

「それな。人間ちゃうやろあの美貌」

ぎくっ!どきっ!

「しかもRP完璧だしほんとヤバい。新人なのにキャラブレないの凄いわ。推せる。絶対覇権取れる」

「早く古参アピしてえ〜」

「やめとけやめとけ。リアコ勢諸々に刺されるぞ」

「ですよね〜くわばらくわばら」

マジか…働いて一週間経ってないのに既にそんなのいるのか…兄者やべえ…。
ミラ人間大好きだけど、リアコとか同担拒否とかガチ恋の人間は悪魔に取り憑かれてるみたいでこえーから…ちょっとご遠慮願いたいのだ…。
いやな?ミラには天霞姫神ちゃんっていう推しがいるから、好き!ってなる気持ちは分かるんだけどな?でも、だからって独り占めしたいのだ!とはならんのだ。恋愛かんじょーってこえーのだ。

とりま、兄者の妹だってバレない様に気を付けねば。


「ミラたん」


「ぼべぇ!?!?!?」

げっほごっほ!!!不意打ち過ぎてジュース変な所入って咽せたのだ!!!いつの間に!!!ついさっきまでお客さんに包囲されてたやろがい!!!

「来てくれたんだ。嬉しい」

「み、ミラって誰ですか…?人違いじゃないですかねぇ…」

「フフ…何言ってるのミラたん。ミラたんを見間違える訳ないでしょ」

ひ、ひぃー!?匂い嗅ぐんじゃねえー!!店内ざわついてんだろうがアホーーーーーー!!!

「アカンサス様…その子は…?」

ぎゃー!!怖い!!怖いのだ!!目が怖いのだ!!狩る者の目をしてるのだ!!


「我の妹だが」


あ、オワタのだ。ミラ終了なのだ。


合掌。


「妹君!?!?!?!?」

あれ!?急に声のトーン上がったのだ!?

「ええええめちゃめちゃ可愛い〜!!」

「そうだろう。ミラたんは世界一…いや全宇宙一可愛い」

ドヤ顔すな。褒め過ぎじゃ。やめれ。

「アカンサス様兄属性withシスコン持ってんの強過ぎる滾る」

「モリス兄妹推しになりました」

「ミラちゃん〜お願い〜お姉ちゃんって呼んで〜」

あわわわわ…大変な事になっちまったのだ…!!

「ミラたんに近付くな家畜共。下がれ」

ほげぇ!?一斉に皆土下座してその体勢のまま器用に後ろにスライドしてったのだ!?っしゃい!!今なら逃げられる!!兄者初めて仕事してくれたのだ見直したのだ〜!!

「じゃあミラはこれで!!兄者お仕事がんばなのだ!!ばいばいなのだ!!」

ドリンク代テーブルに置いてヒイラギの手を取って全力ダッシュ!!!しようとしたら兄者にひょいっと持ち上げられました。

「うおおおおおおおおおおはーーーーにゃーーーーせぇーーーーーーー!!!」

「やだ」

「ちきしょー!!ひ、ヒイラギだけでも逃げるの…だ……?」

ぎゃーーーー!?!?既に囲まれとるぅーーー!?!?

「アカンサス様!!ミラちゃん!!この子は!?」

「駄犬(オス)だが」

「犬耳メイド男の娘…ってコト…?」

えー、こちらミラ!!現在会場内の熱気が半端ないです!!ボルテージマックスです!!助けてください!!助けてーーーーー!!!!!!



「づがれだ………」

やっとこさおうち帰れたのだ…体力の限界なのだ……ぱたり。

「ごしゅじんさま、よしよしー」

玄関入った途端に力尽きたミラの頭をヒイラギがなでなでしてくれた。
うっ…ヒイラギも疲れてるだろうに…なんて優しい子なのだ…。

「ありがとなヒイラギぃ…ヒイラギもよしよしなのだ…」

人間多過ぎてヒイラギ完全にフリーズしてたのだ。終盤置き物と化してたのだ。人見知りのヒイラギには刺激が強過ぎたのだ。

…しかし、悪魔系コンカフェがまさかあんなにも戦場だとは予想してなかったのだよ。兄者のせいで散々な目に遭ったのだ。帰って来たらお説教……したら喜ばれそうだからどうしようもないな…はぁ…。

今日はもう閉店ガラガラなのだ…。




【Interlude.3】

「ふむ…」

空港から出たばかりの男が、キャリーバッグを片手に顎に手を添える。それから、瞼を閉じたまま歩き出す。
開く気配はない。しかしまるで見えているかの様に、器用に人や物を避けていく。

黒い装束を纏った男は、移動の末…とある木造アパートの前で立ち止まった。




【Chapter.4】

「まだ8時か…」

むにゃむにゃ…今日はバイト昼からだし、ゆっくり寝るのだ…ヒイラギもふもふしつつの三度寝行きまーす………

「…んあ?」

ピンポン鳴ったのだ…こんな朝から誰だぁ…?兄者…はソファ座ってミラの事ガン見してるし違うか…いやガン見してんじゃねーのだ…寝にくいやろがい…。

…とか思ってたらまたピンポン鳴ったのだ…兄者動こうとしないし、しゃーない…起きるか…よっこいせ。




あのー。ミラが起き上がった途端、玄関ドア吹き飛んだんだが?何を言ってるのか分かんないと思うけどミラも何が起きたのか分かってねーのだ。マジで何が起きた?

とりあえず急いで確認しに行ったら…玄関に黒い服で黒い髪の人間が立ってたのだ。


「お主、悪魔でござるな」


「え」

な、なんでバレ……あーっ!!今オフモードだからツノも翼も尻尾もなんも処理してねーのだー!?!?寝起きの頭で完全に油断してたー!!!

「ま、待つのだ!!これには深い訳g」

「問答無用でござる!!」

「ぐあああああああああーーー!?!?!?」

聖水と思わしきもの掛けられた上になんかよう分からん呪文唱えられてるのだー!!!
さては悪魔の天敵エクソシストだな!?絶対兄者が堂々と出歩いてたせいでバレたのだ!!ミラとばっちりじゃんよ!!ちゃんとひっそりこっそり生きてたのに!!えーんまだ死にたくないのだーーーーーー!!!!!

…………って、あれ?


何ともないぞ?


「む…?気配は確かに悪魔…しかしその本質は…。お主、不思議でござるな」

「不思議なのはおにーさんの方なのだ」

見た目もやってる事も完全にエクソシストなのに、口調が武士なのだ。おもしれー男なのだ。
ん?でもミラに効かなかったって事は…エセエクソシストだったのか?

「ミラたん助けて」

本物ですね。疑ってすいませんなのだ。兄者ぷるっぷる震えてるのだ。こんなよわよわな兄者初めて見た。

「お兄ちゃんエクソシストだけは無理」

「この邪悪なオーラ…司教が言っていた悪魔に違いないでござる!!」

ま、まずい!おにーさんが兄者目掛けて走ってっちゃったのだ!急いで追いかけないと!

「待つのだ、おにーさん!!兄者は…」

悪い悪魔じゃないんですって口が裂けても言えねー前科持ちなのだ……でも!


「兄者はミラの、大事な家族なのだ!!」


ミラは兄者とおにーさんの間にしゅばっと滑り込んで、両手広げて兄者を庇ったのだ。ヒイラギも参加してくれたのだ。

「家族…」

おにーさんはそう呟いて、すっごくきょとーんとした感じで続けたのだ。

「自身の命乞いをするならまだしも、家族の身を案ずる悪魔は初めてでござる…」

「お願いなのだ!ミラたち、ぜーーーったい悪い事しないのだ!殺さないで欲しいのだよ!」

「……ううむ」

おにーさん滅茶苦茶悩んでるのだ。ものすんごい困った顔してるのだ。ミラも悪魔のヤバさは知ってるから…悪魔やっつけるのがお仕事のおにーさんの気持ちは理解出来る。ヘンテコ悪魔でごめんなのだ…。

「ミラ殿…でござったか」

「うん!ミラなのだ!」

「そして隣は…」

「ヒイラギなのだ!」

おにーさんは顎に手を添えて、また考え込む。
そういえば来てからずーっと瞼閉じてるのだ。見てないのにミラの事が悪魔だって分かったって事なのだ。さっきオーラって言ってたし、それが関係してるのかな?
おにーさんすげー。

「ミラ殿と、ヒイラギ殿…」

「はいなのだ!」

「お主達の本質は、限りなく善でござる。イレギュラーな事態で拙者困惑しているのでござるが…事実は事実。お主達を祓うのは、見送るでござる」

「ほんと!?」

「しかし」

しかし!?

「此方の悪魔は見過ごせぬでござる」

ぎょえー!!兄者ー!!

「血の匂いがするでござる。これまで一体何人殺めたのか…。生かしておいてはならぬでござる」

やばやばやばやばやばばなのだー!?な、何かないか…何かないか……そうだ!!

「兄者は、魔界を滅ぼしたのだ!」

「な…っ」

よし!好感触!

「悪魔をたっくさんやっつけたのだよ!」

「確かに最近、悪魔の数が明らかに激減したでござる。まさか兄者殿の功績だったとは…」

「兄者もミラも、良い子で暮らすのだ!約束するのだ!」

ぺこーっ!頭ぺこーっ!何回もぺこぺこーっ!

「…しかしオーラが物語っているのでござる。この者は悪であると。これは誤魔化せない真実でござる。拙者の兄者殿への疑念は、晴れぬでござる」

「だったら兄者を監視して欲しいのだ!」

「えっミラたんそれはちょっと」

うるせえ黙っとけなのだ。

「………承知したでござる。ミラ殿の顔に免じて、今の所は保留するでござる。しかし怪しい動きが見えたら、容赦なく祓うでござる。ご理解頂きたいでござる」

「それで大丈夫なのだ!ありがとうございます!」

おら!兄者も頭下げろなのだ!

……。

ぐっ…いくら頭押しても微動だにせんのだ…意地でも下げないつもりだなこの悪魔…こんにゃろめ…。

…えーと、気を取り直して!とりあえず自己紹介するのだ!

「アルケミラ・モリスなのだ!これからよろしくお願いします!」

「ひいらぎ。よろしくー、にーちゃ」

「うむ、よろしくでござる。拙者はメーア教会の司祭、テオドール・フィアベルクでござる」

えへへ、握手握手なのだ!テオさんわざわざ手袋外してくれたのだ!おててあったけーのだ!

「ほら、兄者もちゃんとお名前言うのだ!」

「えーーーーーー…」

「言え」

…………アカンサス・モリス

声ちっっっっさ。そのおもんないっての丸分かりな顔やめれ。



「おお…ミラ殿は、破竹殿の小説を好んでおられるのでござるか!」

「そうなのだ!テオさんも!?」

「うむ!拙者の国では、翻訳されたものが出版されていたでござる。心温まる優しい物語故…拙者の目が見えていた頃は、孤児院で子ども達に読み聞かせていたでござる」

「わー!マジかー!」

きゃっきゃ!きゃっきゃ!あれが好きこれが好きって話すのたのしーのだ!共通の趣味って最高だな!すっかり意気投合したのだ!時間も忘れ……て……

あー!!ヤバいのだ!!もうバイト行かなきゃなのだ!!

「テオさん、ごめん!ミラお仕事行って来るのだ!」

「おお、そうでござるか!気を付けてでござる!」

「ありがとなのだ!帰ったらお話の続きしようなのだ!兄者の事、よろしくなのだー!」

「任されたでござる!」

よーし、いっそげー!!



んしょんしょ!頑張って働くのだー!せいっ!せいせいっ!ハンバーガー作りまくるのだー!うおーっ!

なんか、心がワクワクソワソワしてるのだ!

「ミラちゃん、今日いつもより楽しそうだね!良い事あった?」

先輩にこそっと話し掛けられたのだ。
ミラ、そんなに分かりやすかったかな!?はずかしーのだ!

「お友達、出来たんです!」

へっへへー!おうち帰るの楽しみだーい!





【Interlude.4】

「お、お前…我のミラたんとあんなに…仲良く…」

ミラがバイトに出掛けて間も無く。部屋の隅で体育座りをしていたアカンサスが、肩を震わせながら口を開いた。

「ミラ殿はとても良い子でござるな、兄者殿」

「駄犬といいお前といい何故我を兄者と呼ぶ!?やめろ!!不愉快だ!!ミラたんの特権だぞ!!」

「妙にしっくりくるのでござる」

「んだんだー」

ソファに並んで腰掛けているテオドールとヒイラギは、まるで周囲にほわほわと花を漂わせているかの様な雰囲気を纏っている。怒り心頭のアカンサスとはてんで真逆だ。

「して、兄者殿。今後拙者はお主を監視する訳でござるが…」

「帰れ」

「それは無理でござる」

「帰れったら帰れ」

「では、拙者の故郷に兄者殿を連れて行くしかないでござるな」

「帰らなくていいです」

「うむ」

テオドールはメーア教会の司祭だ。当然、故郷には彼以外のエクソシストや彼よりも実力の高い司教が居る。つまりアカンサスにとって生き地獄に等しい場所なのである。それこそ死んだ方がマシな程の。

「くそ…何故こんな事に…!ミラたんと魔界に逃げ…いや、もう魔界は存在しないのか…誰だ魔界滅ぼしやがったの…あっ我だ…」

「兄者殿」

「ひっ…!?な、なんだ!手短に言え!」

「ミラ殿は働いておられる様でござるが、兄者殿は?」



「アカンサス様、そ、その方は…!?」

「我の召使だ」

悪魔系コンカフェにて。アカンサスは当たり前の顔で客にホラを吹いていた。
勝手に召使認定されたテオドールが否定すべく言葉を発するも、客の黄色い歓声に掻き消されてしまう。

「流石アカンサス様!!ヒイラギちゃんの他にも召使さんがいるなんて!!」

「美形〜!!お名前なんて言うんですか!?」

「拙者は、テオドール・フィアベルクでござる」

「テオ様!!まさかのござる口調!?ギャップ萌えー!!」

「可愛い〜!!テオ様も此処で働いてくれるんですか!?」

「いや、拙者はただ兄者殿の監視を…」

「監視ぃ!?」

「そうだ、こいつは心配性でな。付いて行くと言って譲らなかったんだ。全く…」

盲目信者とでも言うべきファンに囲まれながら、アカンサスはわざとらしく肩を竦めるのだった。憎たらしい程のドヤ顔を浮かべながら。



「摩訶不思議な空間でござった…」

帰路につきながらテオドールは首を傾げる。アカンサスから雑な扱いを受けると喜ぶ客達の姿は、彼にとって衝撃的だったのだろう。何せ悪魔が悪魔らしい事をしているのに喜ばれていたのだから。

アカンサスは、計画通りとでも言いたげにほくそ笑む。
監視の目がある以上、日常的に迂闊に人間を貶める事は出来なくなったが…コンカフェの仕事という名目であれば話が変わるだろうと踏んでいたのである。

「これで分かったろう…我は善行を積んでいる。つまり、監視する必要はない」

「それはそれ、これはこれでござる」

「なんでだよふざけんな」

「ふざけておらぬでござる。仕事は仕事、私事は私事でござるからな。まだ拙者はプライベートの兄者殿を存じておらぬ故…結論を出すには早いでござる」

「ぐっ…!」

正論を前にアカンサスがたじろいだ。

ボロを出せば即終了のデスゲームは、始まったばかりである。




【Chapter.5】

「ミラちゃん、一番乗りだねぇ」

「うん!!」

「流石だねぇ」

ポスターに開店時間前からの待機は近隣の方のご迷惑になりますので禁止とさせて頂きますって書いてあったから、ミラめちょめちょ早起きして全力ダッシュして来たのだ!

「ミラちゃんにはする必要ないのは分かってるけど、ルールだから許してね。それじゃあ、質問いくよ」

「ばっちこーい!」


転売ヤー弾きの作品に関する質問難無くクリアして〜…サイン会の整理券、ゲットなのだーーーーー!!!やっほーい!!!やっほほほーい!!!

スキップして帰るのだ!らんらんらん!

うわー!後ろにまだまだたっくさん人間並んでるのだ!なんかミラ勝手に嬉しくなっちゃう!好きなものを同じく好きだって思ってる同士がこれだけ居ると思うと、心臓がドキドキするのだ!ハッピーなのだ!
テオさんが言ってたけど外国でも翻訳したやつ出てるみたいだし、そりゃそっかーって感じだけどな!世界の破竹せんせーなのだ!へへ!



「たっだいまなのだ〜!!」

「おかえりー」

「無事にゲット出来たのだ!起こしてくれてありがと、ヒイラギ!」

「う。よかたね、よかたねー」

くーるくるくる!くーるくるくる!ヒイラギ抱っこしてくるくるー!

「ミラたんおはよー」

「ミラ殿、おはようでござる!」

兄者とテオさんだ!
昨日から二人でミラの隣の部屋に住んでるのだ。ルームシェアって事でテオさんが家賃半分出してくれる事になったのだ。ほんとテオさんはちゃんとした人間なのだ!安心!

「おはようなのだ!」

整理券の事報告したら、二人共嬉しそうにしてくれたのだ。
…実はテオさんも一緒にと思ってたんだけど、丁度兄者のお仕事の日だから…ぐぬぬ…ミラだけ申し訳ないのだ…。

「ミラ殿、お気になされるな。拙者の分まで楽しんで来てくだされ」

はわ!?テオさんってエスパーなのか!?ミラのもやもや察してくれた上に優しいのだ…!!

「うっ…かたじけないのだよ…!」

「ふふ。ミラ殿が幸せであれば、拙者も幸せ故」

「テオさん…!!!」

眩しいのだぁ…慈悲の具現化なのだぁ…足向けて寝られんのだぁ…兄者見習ってくれなのだぁ…。

よーっし!ミラ決めた!テオさんの事、破竹せんせーにお話しするぞ!きっと喜んでくれる筈なのだ!



そして遂に迎えたのだ…待ちに待ったサイン会当日!!

「ぜぇ…ぜぇ…」

心臓ドッキドキのバックバクなのだ…!!
整理券を大事に大事にお財布に入れて…いざ、出陣!!


…えー、此方ミラ!無事着いて、開始時間まで待ってるのだ!
いつもはお店にないテーブルとか椅子とか設置されてて、サイン会やります!の空気ビシバシ感じるのだ。ひゅ〜…こいつぁやべえのだ…!
ミラ整理券一番だから、トップバッターなのだよ!!ほああー!!緊張するのだー!!うわー!!あー!!楽しみー!!ミラ今から破竹せんせーとめののんせんせーに会えるのか!?やばない!?やばいて!!認知されちまうのだ!!ぎゃーーーー!!!

「ごしゅじんさまー。りらっくすー。りらっくすー」

「う、うん!!」

同行者一人までならOKって話だったから、ヒイラギに付いて来て貰ったのだ。おてて繋いでくれて助かるのだ。ミラだけだったら今頃溶けて無くなってたかもしんないのだ。

深呼吸するぞ〜…スー…ハー…スー…ハー…!

…あっ!!せんせー達に似てる眼鏡のおにーさんが出て来たのだ!

「皆様、本日はお越し頂きありがとうございます。開始時刻となりましたので、これよりサイン会を始めさせて頂きます」

んぎゃーーーーーーーーー!!!!

「三枝破竹です。よろしくお願いいたします」

「めののんですぅ!よろしくお願いしまーす!」


ぎゃああああああああああああああああどぅえええええええええええええ本物だああああああああああああああーーーーーー!!!!!


!!眼鏡のおにーさんが、ミラを見てにっこり微笑んでくれたのだ!!

「整理番号一番の方、どうぞ」

「ひゃぁい!!!!!!」

やっべ完全に音外したのだ!!後ろからくすくすした笑い声聴こえてくる!!はっず!!ヒイラギ居なかったら終わってたのだ!!

ミラは右手と右足、左手と左足を同時に出しながらぎっぎっぎっ…と近付いた。それからピシッと直立不動になった。背筋ピーンなのだ。

「ファ、ファンです!!!」

あたりめーなのだ。ファンじゃなかったらまず整理券すらゲット出来ないしサイン会来れねーのだ。そもそもこいつトップバッターなのだ。

「破竹せんせーの本、何回も読んでます!!あったかくてほわほわして大好きです!!めののんせんせーの漫画も絵きれーで読みやすくて大好きです!!」

ゎ、ゎぁ……ミラ今ご本人にファンレター読み上げてるぅ…。


ほわぁ!?!?!?ミラの目の前にせんせー達のおててがぁ!?!?!?


「読んでくれて、ありがとうございます。嬉しいです」

「これからもよろしくねぇ!」


ミラの左手が破竹せんせーに…右手がめののんせんせーに…包まれて…いる…だと………???



…はっ!!


あぶねーあぶねー!!意識遠くに行きそうになったのだ!!テオさんの事もお話ししないと!!

「実は、外国の友達も読んでたんです!翻訳されたのを昔読んでたって…!大好きだって!今日はどーーーしても外せない用事があって来れなかったんですけど、応援してるって言ってました!」

ミラの報告、二人共嬉しそうにうんうん聞いてくれたのだ…!良かったー!テオさん喜んでくれるかなぁ!


そしてそしてー!新刊にサイン書いて貰う事になったのだー!

「お名前はどうしますか?」

「ミラちゃんへ、でお願いします!」

おばーちゃんの言ってた通り、破竹せんせーすっごく礼儀正しいのだ!ミラみたいなちんちくりんにも敬語使ってくれて…えへへ。笑顔が優しいのだ。

「ひょぇ」

わああ〜…ミラの名前書いてくれてる…字すっごい綺麗なのだ…感動…胸熱…。

「あたしはサインと似顔絵描くよぉ〜!5秒待ってねぇ」

破竹せんせーから本受け取っためののんせんせーが、さらっとすげえ事言ったのだ。
似顔絵描いてくれるんか!?めののんせんせーが!?マジで!?追い銭いくらすれば良いのだ!?

「どひぇ」

はっや!!めののんせんせーのほほんとしてるのに手が速…えっ…速っ…なんかもう残像見えるのだ!!線に迷いなさ過ぎなのだ!!ミラの事初めて見る筈なのにこんな事ある!?めののんせんせーデッサン得意ってのは聞いた事あるけどこのスピードはバケモンじみてるのだー!?すげー!?



「はふぅ…」

お、終わったのだ…夢の様な時間が……。
ほんの1分くらいの出来事だったのに充実っぷりがエグい…ミラ…せんせー達とお話して握手してサイン貰って似顔絵まで貰ってしまったのだ…なんやこれ…なんなんや…これ………。


し あ わ せ 。


本抱き締めつつ、ヒイラギとおてて繋いで帰ろうとしたら。

「どうしよ神々廻!!!拭っても拭っても手汗出てくる!!!除菌シートもうないんだけど!!!やばい!!!このままじゃ僕のせいで先生が穢れる!!!」

「握手無しにすれば?」

「あ?何寝言ほざいてんだテメー」

「情緒不安定やなー」

「何の為に一週間近くこの町で待機してたと思ってんの?今日を迎える為だろうが!!」

「良かったねーユウくん」

「その呼び方やめろしばくぞ」

この前ハンバーガー爆食いしてたおにーさんと健康志向のおにーさん発見したのだ!おにーさん達もファンだったんだなぁ!うれしー!



新刊ヒイラギと読み読みしながら、テオさんの帰りを待ってたら…ピンポン鳴ったのだ!新刊と一緒に全力ダーッシュ!!

「テオさん!」

「ミラ殿!」

「サイン会、すっごくすっごく楽しかったのだ!テオさんの事もお話ししたのだよ!せんせー嬉しそうだったのだ!」

「そうでござったか…!恩に着るでござるよ、ミラ殿」

わーい!テオさん嬉しそうなのだ!わーい!

「次のサイン会は、絶対一緒に行こうなのだ!」

「うむ!」

やっふぅー!!楽しみなのだよー!!

「ミラたん…お兄ちゃんは誘ってくれないの…?」

「ん?兄者、ファン志望か?読む?」

「この前チラ見したけど胸焼けしそうだった」

うわぁ…悪魔だなぁ…。




【Epilogue】

やっぴっぴ〜!今日は良い日なのだ〜!中古ショップで天霞姫神ちゃんの未開封フィギュア見つけちゃったのだ〜!激レアお宝だ〜!まさに御神体なのだ〜!神棚に飾るのだ〜!

「ごしゅじんさま、うれしー?」

「嬉しい!めちゃ嬉しい!」

ウッキウキでおうち帰ったら、ミラんちの前にテオさんと兄者が居たのだ。でもって、テオさん嬉しそうな顔で駆け寄って来てくれたのだ。

「ミラ殿!ビッグニュースでござる!」

「ビッグニュース!?なになに!?」


「破竹殿の作品、映画化決定したらしいでござる!」


「映画化ー!?!?」

すっげー!!すげー!!すげすげげー!!

「今年の秋公開との事でござる!」

「マジかー!!一緒に行こう!!」

「承知!」

映画化…!すげえ…すげえよ…!めでてえよ…!破竹せんせーほんと良い人だし、作品ひっくるめて推してるから…嬉しいなぁ!嬉し過ぎる!

「それ…我も付いていかないと駄目か…?」

「当然でござる。兄者殿は拙者から離れてはいけない故」

「拷問じゃねえか」

兄者、邪悪だから破竹せんせーの作品肌に合わないっぽいんだよな。まあ頑張れなのだ。わはは。

「仕方ない…寝てやり過ごすか…」

「そんな不届者は叩き起こすでござる」

「悪魔はお前の方だろ」

呆れる兄者を、ミラ達は明るく笑い飛ばした。



大好きな優しい人達と暮らすのも、バイト頑張るのも、推しを応援するのも…全部、ぜーんぶ!楽しいのだ!毎日がキラキラしてるのだ!

ミラ、魔界追放されて良かった!
これからもずーっと、皆で楽しくやれたらいいな!