Humanoid/SS-4

「一面マグマですね。ひゅー」

ひゅー!!!出ーたよハズレの世界がー!!!

砂だけとか海だけもしんどかったけど溶岩オンリーはもはや悪意しかないだろ誰だよこんな世界作りやがったの!!!
……あっ、女神か。許すまじ。

『暑いのか熱いのか分かんないよぉ…こんなの無理無理三日も滞在したら俺様死ぬぅ…』

「海雪さんはいつも大袈裟ですね」

え?俺様がおかしいの?活動中の火山の中で三日間暮らさないといけなくなった時に生き延びられる奴ってそんなに多いの?

「こんなの温かい風呂みたいなものですよ」

『拷問地獄風呂に訂正していい?』

「大丈夫ですって。ほら、見ていてください」

そう言ってマリンは足元の小石を拾い上げた。

「この石が〜…」

マグマに向かって投げられた小石は……


じゅっ。


「溶けます」

『溶けるんかーーーーーーーい!!!』

何の捻りもない事実見せられただけやないかーい!!余計怖くなったじゃんばかー!!

…って、あれ?

『なあマリン』

「なんですか」

『髪燃えてない?』

「おや。ほんとですね」

……か。


髪、燃えてるぅーーーーー!?!?!?


『何平然としてんだマリンさん!!早く消火しなさい!!』

「仕方ないですね」

なんで渋々って感じのノリなの??自分の髪燃えてる奴の反応じゃなくない??ねえ??

冷静の極みと言える落ち着きっぷりで、マリンは上着の袖で髪をぽすぽす叩いた。無事火は消えたけど…案の定、一部分とはいえ焦げちゃってる。
勿体ねえ…せっかく雪みたいに綺麗な髪なのに…。

「放っておいたら黒髪になっていたかもしれませんね。マリンスミーに改名しなくてはいけない所でした」

『炭なだけにってか』

黒髪も似合うだろうけどそんな経緯でなって欲しくないわ。

「自分がマリンスミーになるとしたら、海雪さんは海炭さんにネームチェンジですね」

『連動さすな』

「自分の名前は海雪さんから取られている…つまり自分が改名した場合、海雪さんの名前も変わるという事です。これぞ運命共同体」

知らん間に謎システム導入されてるぅ…まあ運命共同体なのは認めるし悪い気はしないけどぉ…。

「あ。海雪さん」

『なんだー』

「足場が減ってきてます」

『え』

今俺様達、マグマの海に浮かんでる岩の上に居るんだけどね。あのー…俺様の見間違えじゃなければ面積が…じわじわと…狭く…。

『いやあああああああああーーー!!!!!』

「どうどう」

『だずげでえええええええーーー!!!!!』

「まあまあ、餅ついて」

『そーれっ!ぺったん!ぺったん!…やっとる場合かーーーー!!!!!』

そもそも刀が餅つけるかーーー!!!!!

「ナイスノリツッコミ。おや…あそこにセーフティゾーンが見えますね」

『ほ、ほんとだ!』

マリンの言う通り、離れた所に安全そうな場所があるのを確認した。

『早く行こうぜ!!』

「任せてください。高跳びの要領で行きます」

『うん?』

あのー…それもしかして…。

『俺様を高跳び棒にしようとしてません?マグマの中に俺様突っ込もうとしてません?』

「一瞬なら平気平気」

『秒で溶けるわい』

「そこを何とか」

『無理無理無理無理』

「やれば出来る」

「根性でどうにか出来る範疇じゃないねんマリンさん」

「冗談ですよ」

『良かった〜!!』

ほんとやーめーろーよー!マリンさんの真顔淡々ブラックジョーク、すっかり慣れたけどたまにひやっとさせられるぜ!周り滅茶苦茶熱くて暑いのに!もう!

「ところで海雪さん。自分、一つやりたい事がありまして」

『え?今?今じゃないと駄目?』

「駄目です」

『駄目かぁ』

なら仕方ないかぁ。あはは。

「よく見ていてくださいね」

そう言ってマリンは手頃な岩に俺様を立てかけて…何を血迷ったのか、マグマに向かってぴょんとジャンプした。そして、上に向かって伸ばした腕の親指を立てて一言。

「アイルビーバック」



「………はっ!!」

マリンがマグマに沈んだ衝撃映像によるショックで、俺様は勢い良く目を覚ました。起き上がった拍子に布団がふっとんだ。

そう。布団がふっとんだ。

………ぷぷっ。

「どうしましたか、海雪さん。まだ夜中ですよ」

「あっ…ごめん。起こしちまったな」

隣で布団敷いて寝てるマリンに謝ってから、俺様は胸を撫で下ろす。
いやぁ〜ほんと良かったぁ…現実じゃなくて…。妙にリアリティあったからドキッとしたぜ。

「…実は、怖い夢見ちまってよ」

「ほう。夢ですか。自分は見た事ないのですが、とりあえず励ましてあげましょう。ドンマイドンマイ」

軽いなー。羽根みたいに軽いなー。

「ドンマイはさておき、明日も仕事ですし二度寝をオススメします」

「うん。そうするー」

布団を手繰り寄せて、俺様はぽすっと横になる。笑ったら気が楽になったし、すやっと眠れそうだ。

「次は、良い夢見れたら良いですね」

マリンはそう言って、優しく頭を撫でてくれた。

「ん。ありがとな」

「おやすみなさい」

「おやすみー」

「3秒以内に寝てください」

「それはもう気絶の域ですマリンさん」

「子守唄歌ってあげますね」

「マリンの歌毎回お経じゃん」

「失礼な。心を込めているというのに」

「ほんと?」

「早く寝ろと念じながら読んでます」

「お経じゃん」

読んでるって認めましたよこのアンドロイド。

「つべこべ言わない。お口チャックですよ」

「むん」

「よろしい。では聴いてください。マリンスノーで……ねんねんころりよ」

本当にやるんかい。歌番組の司会みたいな事言っちゃってるし。もー。


お経みたいな歌を聴きながら、俺様は瞼を閉じる。

…なんだか、面白い夢が見れそうだ。