お車で移動中の、とある昼下がり。
「神々廻サン!そこのお電柱で一旦ストップですわ!」
「どしたん。トイレ?」
「ちょおおおおおい!?!?ワタクシはわんチャンじゃありませんわよ!!!」
マーキングしたいのは神々廻サンだけですわ!ぽっ!
…って、それはさておき!
「ほら、見てください!」
「何」
ワタクシ発見してしまったんです!!お電柱に貼られている、このおチラシ…!!
「迷子の迷子の子猫チャンですわ!!」
せっかく帰るお家があるのに勿体無いですわ。悲しいですわ。大きな猫チャンなら家出の可能性がなくもないですけれど、小さな子猫チャンみたいですし…放っておけませんわー!!
「探すん?」
「探しましょう!」
「…まあ、別に良いけど」
「流石神々廻サン!」
子猫チャン捜索隊、出動ですわー!!
お車を駐車場に停めた後、神々廻サンはおスマホでおチラシのお写真を撮ってくれました。
ふむふむ…お三毛猫のミャー子チャンですわね。可愛いですわ〜。お電話番号も書いてありますし、見つけ次第お飼い主サンに連絡する事にいたしましょう。
では…いざ!!
「ミャー子チャーン!!ワタクシの腕の中においでませー!!」
「チビ先輩」
「どうしました神々廻サン!さあ!神々廻サンもご一緒に!」
「近所迷惑」
………。
「此処住宅街。あと、大声出したら猫逃げると思う」
「すみませんでした…」
ワタクシ大いに反省しました…しょぼぼん…。
「こほん…では、頭脳戦といきますか」
騒がしい頭を落ち着けて…っと。
…確かに神々廻さんの言う通りだ。張り切り過ぎて子猫が逃げてしまっては本末転倒。冷静にいこう。
子猫が迷子になってから、一週間経っている。この間に何か食べたのだろうか。親切な人が気まぐれで餌を与えていればいいけど、そうでなかったら。
家猫…ましてや子猫が、野生の環境下で餌を獲るのは相当難しい筈だ。腹を空かせている可能性が高い。
「神々廻さん、食料調達しましょう。空腹で弱っているかもしれません」
「ん。ナイスアイデア」
「ど、どうも…」
素直に褒めてくれると照れるな…。
という事でぼく達は、近場のスーパーで猫缶を入手した。これで誘き出せるといいんだけど。
「…ん?」
買い物している間スマホを見ていた神々廻さんが、ぼくの肩をちょんちょんと指で突いてきた。
「猫の探し方調べた。弱ってる猫だと、暗くて狭い場所でじっとしてる事が多いらしい」
「ありがとう、神々廻さん。有益な情報です」
「あと、落ち着いた声で名前呼ぶのはOKっぽい。大声はNGだけど」
「…了解です」
地雷笑顔で踏み抜いてたワタクシさんに聞かせてやりたいな。
「ミャー子ちゃーん」
猫缶片手に、住宅街を探索する。
猫は歩いて探すのが良いらしい。それから、猫の目線で…というのがミソなのだとか。幸いぼくは背が低いから、適役かもしれない。
それにしても…。
「…居ないなぁ」
「焦っても仕方ないし、気長にやろ」
「そう、ですね」
失踪して一週間。既視感のある状況に、どうしてもあの子の顔が頭を過ぎった。
どうか、生きていてくれますように。
ありとあらゆる隙間を探して、探して…気付けば日が暮れていた。
神々廻さんが調べた所によると、猫は夜間に行動する事が多いという。ここからが本番だ。
「チビ先輩。飯食わんでいいの?」
「…あ。言われてみれば…」
しまった。何だかんだ昼ご飯食べてなかったんだっけ。神々廻さんに申し訳ない事をしてしまった。
「無理は禁物。まず自己管理を第一優先にするべき」
「返す言葉もございません…」
年下の未成年に正論で諭されてしまった…恥ずかしい…穴があったら入りたい…。
「……えっ」
項垂れた拍子に、視界に入ったのは。
「ミャー子ちゃん?」
間違いない!この柄…!探していた子猫だ。
狙い通り猫缶につられてくれた様で、ぼくの足元に擦り寄っている。人懐っこい子なのか、それとも手段を選んでいられない程に空腹なのか…。
ぼくはそっとしゃがんで、猫缶を地面に置く。するとミャー子ちゃんはくんくんと暫く匂いを嗅いでから、ちまちまと食べ始めた。
「良かった…見つかって…」
「オレ、飼い主に連絡するわ」
「お願いします」
流石。ぼくの相棒は、手際が良くて頼りになる。
「本当に、本当に…ありがとうございました…!ミャー子が居なくなってから、生きた心地がしなくて…っ」
「いえ、どういたしまして…!ミャー子ちゃん、もう飼い主さんを悲しませちゃ駄目だよ」
理解しているのかたまたまなのか…ミャー子ちゃんは、みゃぁと鳴いた。場の空気がふっと軽くなる。
「それでは、ぼく達はこれで。飼い主さんもミャー子ちゃんもお疲れでしょうし、ゆっくり休んでくださいね」
飼い主さんは泣きながら、何度も何度も頭を下げて、ぼくらを見送ってくれた。
うーーーーーん!!!おビクトリーですわーーーー!!!とっても良い事してしまいましたわーーーー!!!
「さあ神々廻サン!!お祝杯といきましょう!!」
「そだな」
「オシャレで大人〜な、バーとか如何です!?」
「おまわりさーん。未成年連れ込もうとしてるやべー奴がいまーす」
「いやぁん!冗談ですわよぉ!」
ほんとほんと。
「牛丼食べよ」
「賛成ですわー!」
二人並んで食べたおキングサイズのお牛丼、いつも美味しいですが…今日は一段と美味しかったですわ!!