Maze Haze Scapegoat/SS-2

お車で移動中の、とある昼下がり。

「神々廻サン!そこのお電柱で一旦ストップですわ!」

「どしたん。トイレ?」

「ちょおおおおおい!?!?ワタクシはわんチャンじゃありませんわよ!!!」

マーキングしたいのは神々廻サンだけですわ!ぽっ!
…って、それはさておき!

「ほら、見てください!」

「何」

ワタクシ発見してしまったんです!!お電柱に貼られている、このおチラシ…!!


「迷子の迷子の子猫チャンですわ!!」


せっかく帰るお家があるのに勿体無いですわ。悲しいですわ。大きな猫チャンなら家出の可能性がなくもないですけれど、小さな子猫チャンみたいですし…放っておけませんわー!!

「探すん?」

「探しましょう!」

「…まあ、別に良いけど」

「流石神々廻サン!」

子猫チャン捜索隊、出動ですわー!!



お車を駐車場に停めた後、神々廻サンはおスマホでおチラシのお写真を撮ってくれました。
ふむふむ…お三毛猫のミャー子チャンですわね。可愛いですわ〜。お電話番号も書いてありますし、見つけ次第お飼い主サンに連絡する事にいたしましょう。

では…いざ!!

「ミャー子チャーン!!ワタクシの腕の中においでませー!!」

「チビ先輩」

「どうしました神々廻サン!さあ!神々廻サンもご一緒に!」

「近所迷惑」

………。

「此処住宅街。あと、大声出したら猫逃げると思う」

「すみませんでした…」

ワタクシ大いに反省しました…しょぼぼん…。

「こほん…では、頭脳戦といきますか」

騒がしい頭を落ち着けて…っと。

…確かに神々廻さんの言う通りだ。張り切り過ぎて子猫が逃げてしまっては本末転倒。冷静にいこう。

子猫が迷子になってから、一週間経っている。この間に何か食べたのだろうか。親切な人が気まぐれで餌を与えていればいいけど、そうでなかったら。
家猫…ましてや子猫が、野生の環境下で餌を獲るのは相当難しい筈だ。腹を空かせている可能性が高い。

「神々廻さん、食料調達しましょう。空腹で弱っているかもしれません」

「ん。ナイスアイデア」

「ど、どうも…」

素直に褒めてくれると照れるな…。



という事でぼく達は、近場のスーパーで猫缶を入手した。これで誘き出せるといいんだけど。

「…ん?」

買い物している間スマホを見ていた神々廻さんが、ぼくの肩をちょんちょんと指で突いてきた。

「猫の探し方調べた。弱ってる猫だと、暗くて狭い場所でじっとしてる事が多いらしい」

「ありがとう、神々廻さん。有益な情報です」

「あと、落ち着いた声で名前呼ぶのはOKっぽい。大声はNGだけど」

「…了解です」

地雷笑顔で踏み抜いてたワタクシさんに聞かせてやりたいな。



「ミャー子ちゃーん」

猫缶片手に、住宅街を探索する。
猫は歩いて探すのが良いらしい。それから、猫の目線で…というのがミソなのだとか。幸いぼくは背が低いから、適役かもしれない。

それにしても…。

「…居ないなぁ」

「焦っても仕方ないし、気長にやろ」

「そう、ですね」

失踪して一週間。既視感のある状況に、どうしてもあの子の顔が頭を過ぎった。

どうか、生きていてくれますように。



ありとあらゆる隙間を探して、探して…気付けば日が暮れていた。
神々廻さんが調べた所によると、猫は夜間に行動する事が多いという。ここからが本番だ。

「チビ先輩。飯食わんでいいの?」

「…あ。言われてみれば…」

しまった。何だかんだ昼ご飯食べてなかったんだっけ。神々廻さんに申し訳ない事をしてしまった。

「無理は禁物。まず自己管理を第一優先にするべき」

「返す言葉もございません…」

年下の未成年に正論で諭されてしまった…恥ずかしい…穴があったら入りたい…。

「……えっ」

項垂れた拍子に、視界に入ったのは。

「ミャー子ちゃん?」

間違いない!この柄…!探していた子猫だ。
狙い通り猫缶につられてくれた様で、ぼくの足元に擦り寄っている。人懐っこい子なのか、それとも手段を選んでいられない程に空腹なのか…。

ぼくはそっとしゃがんで、猫缶を地面に置く。するとミャー子ちゃんはくんくんと暫く匂いを嗅いでから、ちまちまと食べ始めた。

「良かった…見つかって…」

「オレ、飼い主に連絡するわ」

「お願いします」

流石。ぼくの相棒は、手際が良くて頼りになる。



「本当に、本当に…ありがとうございました…!ミャー子が居なくなってから、生きた心地がしなくて…っ」

「いえ、どういたしまして…!ミャー子ちゃん、もう飼い主さんを悲しませちゃ駄目だよ」

理解しているのかたまたまなのか…ミャー子ちゃんは、みゃぁと鳴いた。場の空気がふっと軽くなる。

「それでは、ぼく達はこれで。飼い主さんもミャー子ちゃんもお疲れでしょうし、ゆっくり休んでくださいね」

飼い主さんは泣きながら、何度も何度も頭を下げて、ぼくらを見送ってくれた。



うーーーーーん!!!おビクトリーですわーーーー!!!とっても良い事してしまいましたわーーーー!!!

「さあ神々廻サン!!お祝杯といきましょう!!」

「そだな」

「オシャレで大人〜な、バーとか如何です!?」

「おまわりさーん。未成年連れ込もうとしてるやべー奴がいまーす」

「いやぁん!冗談ですわよぉ!」

ほんとほんと。

「牛丼食べよ」

「賛成ですわー!」


二人並んで食べたおキングサイズのお牛丼、いつも美味しいですが…今日は一段と美味しかったですわ!!