「マリ〜ン!雪合戦しようぜ!」
俺様はマリンに背後から抱き付きながら提案する。
今日は店休みだし、思う存分遊べるのだ!
「おやおや。態度といい何から何まで子どもみたいですね。海雪さん何歳でしたっけ?」
「来年で二十歳!」
「セウト〜」
「セーフとアウト混ぜないで!?グレーゾーンって事!?」
「知ってますか、海雪さん。自分達、お客さんから実の姉弟みたいって言われてるんですよ。勿論自分が姉です」
「え!何それうれしー!見た目似てるからかな?」
「海雪さんがおこちゃまだからです」
「にゃ〜〜〜にぃ〜〜〜!?」
うえーん!どうせ俺様はガキですよー!
でもこうなっちゃうのも仕方ないのだ。だってさ!?だってだよ!?ずっと会いたかったマリンに会えて、一緒に暮らせてさ!?幸せなんだもん!滅茶苦茶!そりゃ態度にも出るよ!刀だった頃はこんな風に動けなかったし尚更だよ!
「身長は勝っているのに精神年齢で負けている…海雪さんが弟たる所以はそこです」
「うっうっうっ…これから大人っぽくなってギャフンって言わせたる…」
「まあ、自分はそういう所が可愛らしいと思うんですが」
するっと褒めてくれるじゃん…。
いや、これ褒められてんのか?馬鹿にされてるんか?あれ?
「さあ海雪くん。マリンお姉さんと雪合戦(笑)して遊びましょうね」
絶対馬鹿にしとるーーーーーー!!!
…って事で!
防寒対策バッチリな俺様と、雪国って事ガン無視したみたいな普段通りの軽装のマリンは、店の裏の開けた場所にやって来た。
雪玉もさもさ作りながら、俺様は離れた所で立ってるマリンに声をかける。
「いくぞー!マリン!手加減無しだぜ!」
「へいカモン」
「おりゃ!」
はい。当たり前の様に避けられました。知ってた知ってた。マリンさん運動神経カンストしてるもんね。
「では自分の番です」
「ふぎゃ!?」
雪玉によるピンポイント射撃!!問答無用のヘッドショット!!マリンさん、流石です!!
口に入った雪ぺっぺしてから、俺様は反撃に出る!
「やったな〜!!」
「やりました。どや」
「えいっ!えいっ!」
「残像です」
雪の上と思えない身のこなしやめろー!!ぬるぬる反復横跳びすなー!!しかも器用に俺様の顔ばっか狙って当ててくるしー!!
「むきー!!」
「挑戦者、海雪さん。果たして絶対王者マリンに勝てるのかー」
「雪合戦の絶対王者って何よ!?」
納得せざるを得ないけどね!?挑戦者海雪、下剋上目指して〜…ファイ!!
惨敗しました。
「寒いよぅ…」
「可哀想に。雪まみれじゃないですか。誰がこんな惨い事を」
「マリンお姉さんだよ」
「はて。記憶がないですね」
出たよお得意の記憶抜け抜けムーブ。わざとだって分かってるからね。マリンさんの記憶、俺様関連だと消えないの知ってるんだからね。
…知ってるんだからね!えへへ!
「さーて。炬燵でぬくぬくしますか」
「そだな!」
「お前ら、手繋ぐの好きだよなぁ」
家に帰った俺様達を見て、親父が微笑ましいぜオーラ出しながらそんな事を言って来た。
「自分は海雪さんに合わせているだけですよ」
「え!?本当は嫌だったの!?」
「嫌とは一言も言ってないでしょう。本当に嫌ならやりません」
海色の綺麗な瞳が、まっすぐに俺様を見る。
「好きですよ。ちゃんと」
………。
ときめいてもうたやろがい!もう!マリンさんのばかばか!いつも唐突なんだから!心の準備させてよね!
「お、俺様も好き…」
「親父さん、みかん食べたいです。あとお茶飲みたいです」
「ちゃんと聞いてよぉーーーー!!!」
「せいっ」
「んぎゃー!?!?ちべたい!?!?」
何で急に俺様の首の後ろに手突っ込んだのマリンさん!!キンッキンに冷えとるやないかい!!
「はー。やはり海雪さんはぬくぬくですね」
「逆にマリンは冷え過ぎだよ!!」
「素手で雪触って冷えない訳ないでしょう」
「うんまあそれはそう」
「あっためてくださいね。海雪さん」
「…仕方ねえなー」
可愛いんだからもー。と思いながら、手袋外してると。
「とうっ」
だから首元で暖取ろうとするのやめて!?
「沁みるぅ」
炬燵入ってお茶飲んでみかん食べる…まさに至福のひととき…。
「海雪さん」
「はいはい。あーん」
「もぐもぐ」
マリン、いつも俺様にみかん剥かせるし食わせたがるんだよな。白い部分嫌だから取ってくださいとか注文までしてくるし。やれやれだぜ。みかんはこの白い筋が栄養だってのによ〜。まあ、マリンは安藤…じゃなくてアンドロイドだから栄養とか関係ないんだろうけど。
白い筋ぺろんと取ってると、マリンが足の先で俺様の膝をつんつんしてきた。
「なぁにマリンさん。御行儀悪いぞ」
「海雪さん、名案があります。あとで雪だるま作りませんか」
「えー!作る作るー!」
「店の前に飾りましょう。包丁持たせれば店の看板代わりにもなります」
あ〜成程!うち包丁研ぎ屋だもんね!
…いや待てし。
「包丁装備した雪だるまとか怖過ぎるわい!!誰も近寄らんわい!!」
「可愛さと狂気を両立させようと思ったのに」
「狂気なのは認めてんのね!?包丁って凶器だもんね!?」
「海雪さんに座布団10枚」
最近見てるテレビ番組に影響受けたなマリンさん。絶対座りにくいから気持ちだけ頂いときます。
それから翌日。
「あら。可愛らしい雪だるま」
「へへ、ありがとよ。うちの息子らが作ったんだ」
「そうなの?海雪くんとマリンちゃん、仲良しねぇ。うちの子も見習ってほしいわぁ」
店の裏でマリンと作業してたら、親父と常連さんの会話が耳に入って来た。
「雪だるま好評ですね、海雪さん」
「だな!」
「仲良しって言われてますね、海雪さん」
「え!う、うん…」
「何照れてるんですか。かーわいー」
うるちゃーい!照れてないやい!ほっぺぷにぷにすな〜!
「刀の頃から分かりやすかったですが、人になるともっと分かりやすいですね」
くすくす笑われてもた。
マリンの笑った顔、昔の記憶の中では激レアだったから…今はいっぱい見れて嬉しいや。
「マリン」
「なんですか」
「大好きだぜ」
ぷぎゃー!?おでこ弾かれたー!?
「唐突なのは良くないと思います」
「え!?照れてる!?マリンさん、照れてる!?」
「顔真っ赤なのは海雪さんの方ですが」
「べ、別に照れてないし!寒いだけだし!」
「はいはい。そういう事にしておいてあげましょう」
優しい〜!!
「さーて。常連さんに雪だるまのこだわりポイントを解説しに行きましょうか」
「海雪なだけにってか」
「いえーす」
先を行くマリンを追いかける。隣に並んで、手を取る。
ひんやり冷たい手。だけど…心はあったかい。
マリンの隣は、俺様の居場所だ。
…そんな事を考えたら、寒さなんてどうでも良くなった。